Jane  1999.1-2 原文
Leggo My Viggo

By Suzan Colon

スーザン・コロンが、俳優のヴィゴ・モーテンセンをバターとシロップで甘〜く味つけ。

俳優、詩人、画家、写真家。そのすべてをやってのける40歳のヴィゴ・モーテンセン。実在するルネッサンス・マンに会える機会を、逃す手はない。ヴィゴが『G.I.ジェーン』でサディスティックなネイビー・シールを演じて、デミ・ムーアに急所をガツンとやられたのは記憶に新しいはず。最新作の『ダイヤルM』でグィネス・パルトロウと共演した(そう、映画の中には彼の描いた絵が登場しているのよ!)彼は、現在『サイコ』を撮影中。ベイツ家を牛耳っているのは誰かを探っている。そして4月には『オーバー・ザ・ムーン』で、ブラウスを売りながら家庭を崩壊させるヒッピーを演じる予定だ。

どこにいようと、どんな映画を撮っていようと、ヴィゴの契約書には “ハロウィーンの間は、カリフォルニアのベニスにある家に帰らなければならない” と明記されている。そんなわけで、彼は11歳の息子ヘンリー(パンク・アイドル、イクシーン・セルヴェンカとの短い結婚で誕生)と一緒に “トリック・オア・トリート” に出かけることができるのだ。ヴィゴに惚れ込む理由は、他にもたくさんあるけれど、このエピソードは、かなりポイント高いでしょ。

Q: どこかで、あなたが「ベスト・ウォーク」だって読んだんだけど、どういうことかしら?

ほんと?(笑)わからないなあ。どうして歩き方なんて知ってるんだろう。

Q: あなたの後ろに立ってたんじゃない?

そうか…歩くのを見てたんだな。いい歩き方って、どんな感じ? 僕は、すごくまっすぐ歩き続けられると思うけど。

Q: いいとこついてるんじゃない? ところで、30本くらいの映画に出ているのに、まだ新人だと思われてるわよね。それって、いいこと? 悪いこと?

ある意味、諸刃の刃だね。飽きられていないっていう面では、いいことだと思うけど。まだ自分を表現できていないからだって言われたり、年に2本の映画に出なくちゃいけなくて、その間家を空けなくちゃならないっていうのは、どうだろう。家族や趣味と関係ない生活を送っているなら、それもいいかもしれないけどね。

Q: あなたには、家族もたくさんの趣味もあるものね。ところで、マンハッタン生まれだったわよね?

そうだよ。でも、色んな場所を転々としたんだ。ベネズエラ、アルゼンチン、デンマーク。今も、旅をするのは好きだよ。どこへ行っても、すぐにその場所に馴染むっていうのは、僕の得意技だね。ひとりで過ごすのも平気だし。もし、パーティーで話題を振りまくのが得意だったりしたら、どうなってたか、わからないな。

Q: 絵や詩、写真を始めたのはいつ?

いつだったかな。母が言うには、僕はどこに行くにも鉛筆を手放さなかったって。いつも何か描いてたらしいよ。最近、母が古いノートをくれたんだ。ずっと昔に、僕が絵を描いていたノート。その中に、僕が7歳の時に描いた絵があってね、ワイルドだったよ。それ以外は、ごく普通の絵ばかりだった。剣や銃、墜落した飛行機とか、おしっこしてる絵…とかね。で、そのワイルドなやつは、学校の課題で描いたもので、ページのてっぺんに “赤頭巾ちゃん” っていうタイトルが書いてあった。本格的な絵だったよ。色が混ぜてあって、抽象画みたいだけど、僕はすごく気に入っていたんだ。でもさ、その絵の上には、でかでかと “へたくそ!” って赤いペンで書いてある。下線まで引いてね。学校の先生がよくやる手だよね。建設的な評価だと思ってるんだ。

Q: あらら。でも、初の個展もやったことだし、その先生には目にもの見せてやったって感じじゃない? 自分の作品に値段をつけるって難しい?

個展をやったギャラリー女性が、力を貸してくれたんだ。自分ひとりでやっていたら、きっと最悪の一日になっただろうな。自分の作品を見て、「あーあ!」なんて思ってさ。でも、第三者から見れば、もっと違う印象になるだろ? 何日か前に、自分の作品を全部見直してみたんだ。「なんじゃ、こりゃ」って思ったよ。で、その気持ちが雪だるま式に膨らんじゃって。「いったい、僕はどんな役者なんだろう? どんな父親なんだろう? お笑い草だぜ、まったく。こんなくだらない人間なのに、ひとりよがりもいいとこだ。作品を作るなんて、すぐにやめるべきなんだ。こういうことは、他の誰かに任せればいい!」って気分になった。窓から飛び降りるやつの気持ちが、理解できるよ。

Q: ええっ!そんな気分の時に聞くことじゃないかもしれないけど、ルネッサンス・マンって呼ばれていることは、どう思う?

そんな風に呼ばれたことはなかったよ。そんなにたくさんのことをやる時間を、どうやって作るのかって聞かれたことはあったけどね。

Q: 当ててみましょうか。テレビを見ないからじゃないの?

当たり。息子は、悩んでるみたいだけどね。彼にとって、アニメが見られないことは死活問題らしいよ。だから、アニメは友達の家で見て、自分の家では借りてきた映画をたくさん見ている。そのうち、それが幸せなことだって感じるようになると思うよ。ヘンリーは、本もたくさん読んでるんだ・・・何もしていない時も、ただ座ってるだけじゃなくて、少なくとも創造力は働かせてるね。楽しんで時を過ごすのがうまい。彼はすごいよ。一緒に部屋にいる時でも、完璧に自分の世界を作っているんだ・・・彼がいなかったら、僕はどうしていいかわからないよ。

translated by chica