Now Magazine  1999.4.14
グウィネスとベンが別れたのは僕のせいじゃないよ

アイヴァー・デイヴィス

ヴィゴ・モーテンセンはデンマークの親戚(グウィネスがヴィゴの服のセンスを良くしてくれると願っている)をがっかりさせるのは嫌だが、彼女との情事は映画の中だけで、実際には何もないと主張する。

グウィネス・パルトロウとベン・アフレックが別れた時、多くの人が誰のせいでそうなったのか知っていると思っていた。そう、ヴィゴ・モーテンセンだ。「僕がベンからグウィネスを奪い取ったって言う人から、嫌がらせの手紙が沢山きたよ。」と彼は明かす。

40才になるヴィゴは、サスペンス映画『ダイヤルM』で、彫りの深い顎を持つグウィネスの恋人を演じた。映画には、2人がヌードで演じた、2つの熱烈なラブシーンがあった。だから、グウィネスがベンと別れた時、人々は2人と2人を合わせて、5という結論に達したのである。「本当にあったのは、服を脱いでベッドにもぐりこむ前に、グウィネスの気分を盛り上げて、そして彼女がリラックスできるように、スペイン語のラブソングを歌ってあげたってことだよ。」とヴィゴは言う。「服を脱いで、知らない人とラブシーンをやらなきゃいけない時は、いつも少し不思議な感じがするよ。今回の場合もヘンな感じはしたけど、楽しかったよ。そして、そういうシーンをやるのは気恥ずかしくてイヤだって言う俳優がいるとしたら、そうだね、そんなのは嘘っぱちだよ。」

グウィネスと自分を結びつける話を初めて聞いた時、ヴィゴはそれを笑い飛ばした。「面白い話だと思ったよ。」と彼は言う。「だけど、その後、もう笑っていられなくなったんだ。かなりひどい内容の手紙を受け取ったんだ。」 突然、彼はインタビューにひっぱりだこの状態になった。「なぜグウィネスを誘惑したのか、って質問してくる記者からの電話が鳴り止まなくなったんだ。彼らは映画と現実を混同してたんだ。」 デンマークの親戚までもが、彼がグウィネスの新しい恋人だと確信していた。「電話してきて、僕に良かったねって言うんだ。グウィネスはファッションセンスが良くて、とても上品だから、それが移って僕がもっと服に注意を払うようになるといいね、って言っていたよ。」

デンマーク人のビジネスマンを父に持ち、アメリカ人の母を持つ、ニューヨーク生まれのヴィゴは、ハリウッドの階段をゆっくりと登ってきた。『刑事ジョン・ブック 目撃者』ではアーミッシュの青年を演じたが、ゴールディ・ホーン主演の『スウィング・シフト』、ウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』では、彼の小さな役は編集室の床で終わってしまった。「がっくりくるようなスタートだったよ。」と彼は当時のことを語る。「仕事がない時がほとんどで、家賃を払うために、トラックの運転手や家具の運搬人、ウェイターにバーテンダーといった仕事をしていたよ。」 そしてついに、彼は悪役を演じることで適役を見つけた。『カリートの道』でアル・パチーノをこき使う、すぐに引き金を引きたがる元囚人、『G.I.ジェーン』では、デミ・ムーアのサディスティックでカリスマのある軍のトレーナーを演じた。

しかし、ヴィゴは単なる俳優ではない。彼は、とても才能のある画家でもある。「初めてグウィネスに会った時、彼女の写真を何枚か撮ったんだ。それから、映画のシーンで使われた彼女のポートレートを描いたんだ。」 ヴィゴが演じる殺し屋のロフトにどんな絵があるべきかをダイヤルMの監督が考えた時、この俳優は絵にとりかかり、映画のために40以上ものキャンバスに絵を描いた。

ヴィゴには、パンク・ロッカーであり詩人の元妻、エクシーン・セルヴェンカとの間に、10才になる息子ヘンリーがいる。今や役のオファーは殺到しているが、ヴィゴはめったに断らないようにしている。「キャラクターが面白いと思えなかったから、以前は商業的な映画を避けていたんだ。だけど、息子を養わなきゃいけないからね。」と彼は言う。

最新作『オーバー・ザ・ムーン』では、彼はまたしても一癖あるキャラクターを演じる。「街に転がり込んで、結婚を破綻させるストレンジャーを演じるんだ。」 それから、グウィネスとベンのことを思い出し、急いでこう付け足した。「だけど、もちろん私生活ではそんなことは決してしないよ。」

translated by yoyo