El Señor de los Anillos  2001.5
豆様といっしょ Part 1

〜 The Lord of the Rings (スペインのLotRサイト) カンヌ特集 〜

インタビュアー(以下Q): 俳優さん同士の関係は、いかがでした?

ヴィゴ・モーテンセン(以下VM): 共演者たちには、友達として特別な思いがあるんだ。彼らのちょっとした奇妙な癖とか、撮影中のハプニングとか、きっと忘れることはできないだろうね。これほど共演者たちと親しくなったことは、これまでなかった。もともと僕は、共演者のことを良く知りたいと思う方だけど、今回の場合は、一緒に過ごした時間がとても長かったからね。友情もどんどん深まったんだ。映画の中だけじゃなくて、実際の僕らの中でも。たぶん、ずっと忘れられないよ。いろんな意味で、僕らはお互いを理解し尽くしていたから。ピーター・ジャクソンの果たした役割も大きい。彼が僕らの中に、特別なつながりをもたらしたんだ。きっとピーターは、演じるキャラクターにフィットしているかどうかだけで、僕らを起用したんじゃないと思う。それと同時に、みんなと仲良くやっていけて、本当のコミュニティを作れるような役者を探したんだよ。みんなの個人的な経験を、良いことも悪いことも、僕らは共有した。良い日もあれば、悪い日もある。うまくいかない日には、いつでも誰かが手を差し伸べてくれるんだ。

Q: 撮影は大変でした?

VM: 大変だったよ。家族が恋しくなった。知らない場所が嫌だったわけじゃないよ。僕は、アメリカでも、カナダでも、ヨーロッパやニュージーランドでも、荒野のような場所を見つけて楽しむタイプだし。ニュージーランドは本当に素晴らしかったなあ。かなり奥地にまで旅するチャンスがあったんだ。ものすごく辺ぴで、なかなかたどり着けないような場所へも行くことができたよ。でも、それは同時に30分以上もヘリコプターに乗って移動して、厳しい状況で仕事をしなくちゃいけないって意味でもあるんだけどね。

Q: 素晴らしい経験だと思いますが・・・。

VM: 役者にとっては、いい経験だよね。どこでもくつろげる方法を学べるってことは。それに、実際僕らが経験した撮影は、歴史そのものだったしね。自分が持っているものだけでどうやって生き抜くか、忍耐強くなるためにはどうしたらいいか、自分と向き合うことや、悪に立ち向かう方法・・・たくさんのことを学んだよ。悪はいつでも、弱い者を見つめている。旅の仲間たちは、それを知っているんだ。サウロンが作り出す暗闇に、誰も引きずり込まれることがないように、結束を固める。

Q: ショーン、あなたが演じたキャラクターについて何かコメントを。

ショーン・ビーン(以下SB): そうだな、僕が演じたのは、旅の仲間の中でただひとり、指輪によって堕落させられる人物なんだ。それは、フロドにも、指輪の影響下に踏み込んでしまえば誰にでも起こることなんだけど。たぶんね、ボロミアは、なぜ指輪を悪の力との戦いに使わないのか、なぜ指輪を遠ざけておかなくてはならないのかってことは、理解していると思うんだ。でも、時間が経つにつれ、事態は考えていたほど単純じゃないってことに気づく。ボロミアは徐々に変わっていくんだ。最初に登場した時よりも、どんどん用心深くなっていく。別のプレッシャーがかかってくるんだね。肉体的な強さや能力だけの問題じゃなくなってくる。

VM: ボロミアがそれに気づかないっていうのも理解できるんだ。核兵器みたいな力を持った装置を手にしたとしても、それを使うことができない。そういうことだよね?

SB: そのとおり。彼は指輪を破壊したくはない。破壊するより、悪と戦うために使いたいんだ。

VM: 誘惑なんだよね。指輪を持てば強くなれる。でも一方で、自分自身を見失ってしまうんだ。自分だったらどうするだろう・・・。旅の仲間たちは、全員が一緒にいることで強くいられる。ボロミアやフロドだけじゃなくて、旅の仲間たちはみんな、ずっと指輪の誘惑という重荷を背負っていかなくてはならないんだ。

Q: それで、どうやって・・・。

VM: もし、誰かが強さを失って、指輪を強烈に欲しがったりしたら、つまり、仲間の中の誰かが誘惑に負けてしまったら、旅の仲間の力は弱まってしまう。だから、みんなで、その仲間が正気に戻れるようにしてやらなくちゃならないんだ。すごく興味深いのは、フロドも、ガンダルフも、アラゴルンも、ボロミアも、誰もヒーローじゃないってこと。単純な展開をする映画と違って、この作品では、誰も主役じゃないんだよ。旅の仲間は全員でひとつのもの、そう、一人だけで成り立っているわけじゃないんだ。だから、議論もするし、反対意見も浮かんでくる。僕はこうしたい、いや、僕はこうだって感じでね、問題が起こる・・・。

SB: そう、仲間たちの中で衝突が・・・。

VM: そのとおり。そうだな、言ってみれば、それはアラゴルンの重荷になる。僕が演じたキャラクターは、他にも重荷を背負っているんだよ。ずっと昔から抱えているもので、受け入れなくてはならない血統なんだ。

Q: 彼はその重荷を、ずっと抱えているんですか?

VM: そう。ほとんどずっとね。

Q: あなたは最後に配役されたんですよね。どうでした?

VM: そうだな、まず役柄を把握する必要があった。最初は話の内容さえ知らなかったんだからね。原作を読んだら、バイキングに関する昔話やケルト神話と、どこかしらつながっている部分があったんだ。それが演じる上で役にたったよ。物語の世界にすんなり入っていけたから。遅い時点で選ばれたってことで、いろんな意味で他のキャストから浮いていたような気がする。今まで、既に他の役者がやると決まっていたキャラクターを演じたことはなかったんだ。こういうことって、珍しいんだよ。でも僕は、他のキャストとも、スチュアート・タウンゼントとも知り合いじゃなかったから、純粋にアラゴルンという役を演じることができて嬉しいと思えたんだ。もし、親友の役を奪い取るみたいな状況だったら、あまりいい気分にはなれなかっただろうね。とにかく、彼よりもうまく演じることができるっていう理由で、僕が選ばれたわけじゃないと思うよ。

Q: なぜ、あなたが選ばれたのでしょう?

VM: もちろん、スチュアート・タウンゼントは素晴らしい俳優だよ。これからも、素晴らしい作品に出演していくと思う。今回のことは、なにより年齢の問題だったんだ。アラゴルンは彼よりも年を取っている。キャスティングの時点での、ちょっとしたミスだよね。彼で撮影を始めてみて、間違いに気づいたんだ。わかるよね、このキャラクターは明らかに年を取っている。例えば、(同じ人間の)ボロミアとも、種類が違うんだ。

Q: ボロミアは、私たちと同じ人間なんですよね。

SB: そうなんだ。彼は僕らと同じような人間だよ。

VM: そう、人間だよね。アラゴルンも種族としては平均的な人類だよ。人間なんだけど、寿命は長い。だから、見た目よりも年を取っているというわけなんだ。彼は長い年月を過ごしている。だから、スチュアートよりも僕の方が、この役をやりやすいってことなんだ。

SB: ずっと長く生きられるんだよね?

VM: その通り。

Q: それは、そういう血筋っていうことなんですか?

VM: そう、アラゴルンはヌメノールの末裔だからね。

Q: 自分自身の中に、アラゴルンを見出しましたか?つまり、撮影中、ヴィゴはアラゴルンのようだったんでしょうか?

VM: できるだけ、そうなるようにしたよ。でも、実際は、なかなか時間が取れなくてね。だから、アラゴルンの衣裳を着たまま歩いたりしていたんだ。ピーターは、僕らがストーリーの中にリアリズムを見つけやすいようにしてくれた。撮影で使った衣裳も、武器も、いかにもファンタジーって感じのものじゃなかったし。ドロドロになったり、凍えそうなくらい寒かったり、死ぬほど暑かったり、本当に不快だったんだから。これが、この作品の美しさだと思うよ。まったく別の世界の話だっていうのに、リアルな演技になった。すごくリアルだったよ。少なくとも僕は、まるで実際に起こったことのように感じたな。君も同じだった?

SB: うん、そうだね。たくさんの特殊効果や、驚異的なシーン、環境も・・・撮影した場所の風景もすごかった。ぞっとするような崖や、古い森、誰も行ったことがないような場所だったんだ。もう、言葉にならないくらい素晴らしかったよ。

VM: そうそう。この映画は、実際に見えるものだけで作られているわけじゃないんだ。スリリングな特殊効果とかね・・・世界がどんどん広がっていく。この作品自体がアドベンチャーなんだ。

SB: キャラクター同士の関係もね。

VM: スケールの大きなドラマであり、アドベンチャーだね。

SB: まったく、その通り。人間性の探求だね。それが、この作品の基本にあると思うよ。それに特殊効果とアクションが加わって、完璧なものになるんだ。

Q: こんなに長い間、ひとつのキャラクターを演じてみて、どう感じましたか?

VM: まだ終わってないんだよ!追加撮影やなんかがあるからね。

SB: そして、僕らはまだ、そのことについて話し続けている・・・ヴィゴは、ずっとアラゴルンのキャラクターを、どこかしら持ち続けていると思うんだけど。

VM: そうだね。

SB: ずっとキャラクターをキープして、撮影に戻ればいつでもそれを引き出せる。君の中に、アラゴルンがいるんだよね。

VM: 例えば、こうして君と会っていると、一緒にやった難しいシーンのことを思い出す。二人の演じたキャラクターが親密になる場面なんだけど、一生思い出に残るだろうね。

SB: ほんとに、そうだね。

VM: きっと、他の作品に出ている君を見ても、僕にとって、君と共に経験したことが掛け替えのないものなんだと感じられるよ。これは、他の人には味わえないものなんだ。

SB: 賛成だな。

Q: 原作は、読んでいたんですか?

SB: ずっと昔に読んだよ。20年以上前になるかな・・・。

Q: そんなに前に?忘れられない本だったんですか?

SB: ちゃんと保管していたし、憶えていたよ。確か、アニメ・ヴァージョンもあったよね?

Q: ありますね。

SB: まあ、それはともかく、ずっと昔に原作は読んでいた。で、新たに映画を作るって言う話を聞いて、興味がわいたんだ。作品に参加するために、可能な限りあらゆることをやったよ。実現した時には、心臓が止まりそうになった。考えてもみてよ、ずっとやりたかったことで、なんとしても参加したいと思っていたんだから。取り組むのが難しい、プロジェクトの全容は想像もつかない、そんな古典作品に参加できる機会なんて、そうあるもんじゃないよね。道のりはとても複雑だし。参加できるなんて、信じられなかったよ。

VM: こういった壮大な物語に参加するときは、そうだな、自分の頭で考えて、自分なりに消化する必要があると思うんだ。ただの仕事とはわけが違う。

SB: 巨大プロジェクトだからね、見せ場がどんどん増えていくんだ。正直、最初はこれほど大きなものになるとは思っていなかったんだよ。

VM: 僕は、原作を読んだことはなかったし、作品のテーマさえ知らなかったんだ。撮影場所に向かう時になって、初めて本を買ったんだよ。

SB: 一気に読んだんだよね、大変だったんじゃない?

VM: そう。飛行機の中で読んだんだ。子供みたいな気分になったよ。こういう本を書いたのは、トールキンが初めてじゃないと思う。なんて言うか、『指輪物語』を読んだ時、小さい頃に読んだバイキングの話やケルト神話を思い出したんだよ。西洋には、独自の文化として、こうした古い話がたくさんある。たとえ『指輪物語』を読んでいなくても、アプローチの仕方や映画に登場するキャラクターは理解することができるんだ。この映画がきっかけで、原作を読み始める人もたくさんいると思う。ドイツやイギリスでは、必読の古典なんだよね。文学界に熱烈な信望者もいるし。彼らの中には、この作品がどんな映画になっているか、知りたがっている人もたくさんいるだろうね。

Q: お互いのことを、どう評価しますか?

VM: え?彼の仕事っぷりを?

SB: ヴィゴについてか・・・オーケー、正直言うと、ついこの間、初めて彼がジーンズをはいているのを見たよ・・・撮影中は、絶対に、誰も彼の普段着姿を見たことがないと思うね!(笑)

VM: 彼はいつでもショートパンツをはいていたんだよ・・・暑かろうが、寒かろうが(爆笑)。

SB: いいかい、ヴィゴはみすぼらしい格好をしていたわけじゃないんだ。“ホビット”の衣裳を着ていたんだよ。ほんとに。でも、ホビットにしちゃ、特殊な“見てくれ”だったけどね。だろ?

VM: ショーンは穏やかで、寛大で、本当にリラックスしていたよ。素晴らしかった。すごい集中力なんだ。これほどの集中力を見せる人は、他にいないんじゃないかな。撮影しているシーンの細かい部分にも、全体的なことにも、とにかく映画の中で彼が関係するすべての場面で、こんなに長い間集中力を保っている。すごいスタミナだよ・・・。

SB: ヴィゴは一日4時間以上は眠っていないんじゃないかな?そうだろ?でも、どうだろう、彼は、いろんなことに熱心に取り組んでいるから、それ以上眠ってられないんじゃないかな。

VM: ショーンは、最後の日も、初日と同じように撮影に熱中していたよ。

Q: ミスター・ビーンは心の拠りどころという感じですか?(訳注:原文ではMr.Bean is a rock.と言っています。豆と岩をかけているのか?もしかしたら“The Lord is my rock.”[主はわが支え]という聖書の言葉のもじりかもしれません) 他には?

VM: そうだな、ショーンは僕よりもずっと、ポーカー・フェイスを作るのがうまいんだよ。僕は何度か落ち込むような状況になったことがあるんだけど、そんな時、ショーンや他の仲間たち、そして撮影クルーのみんなが、いつでも助けてくれたんだ。正直、感動したよ。

SB: みんながお互いに助け合ってたよね。時には辛い・・・とても辛いこともあったからね。

VM: みんな、素晴らしいよ。

SB: 全員が『ロード・オブ・ザ・リング』の世界にとても深く関わってたんだ。衣裳部門から、照明担当まで、みんなストーリーに引きつけられてた。これは、珍しいことだよね。

VM: もちろん。

SB: 誰もテーマから目をそらしたりしない。みんなが『ロード・オブ・ザ・リング』に情熱を持っていたんだ。

VM: スタッフ全員、残らず、自分のやるべき仕事を最大限にこなしていた。すべてのシーンを、彼らが熱く見守っていたんだよ。

SB: みんな、原作を完全に理解していたよね。電気技師や普通は台本を読まないような人たちまで。

VM: そうだね。

SB: 僕らが撮影しているのがストーリーのどの部分なのか、ちゃんとわかっていた。

Q: こういう経験は、今までもありましたか?

VM: そうだね、スタッフがとても入れ込んでいる作品は経験あるよ。でも、それが普通ってわけじゃない。ましてや長期間の撮影になるとね。今回は、かなり長期間だったから、あらゆることが起こったんだ。良いことも、悪いこともね。それでもみんな、その間ずっと入れ込んでたし、面白がって仕事をしていたよ。

Q: ピーター・ジャクソン監督とは、撮影前に会っていたんですか?

SB: 何年か前に、ロンドンにある彼のオフィスで会ったよ。彼と一緒に役作りの準備をしたんだ。で、その後は撮影現場で。

Q: 『旅の仲間』のフィルムで、すでに見た部分はありますか?

VM: 特殊効果の部分とか、いくつかの遠景みたいなものは見たよ。僕らが演じたストーリー自体は、まだ見ていないんだけどね。すごく魅力的な映像になっていたな。すべてがありのままに映し出されているっていう感じ。

SB: 見せてもらった映像には、恐れ入りましたって感じ。撮影中は特殊効果の部分を見ることができないからね。彼らが後から付け加えるんだ。だから、完成したシーンを最初に見た時には感動しちゃうんだ。

translated by chica