Empire Online  2003.12.18 原文
LotR インタビュー: ヴィゴ・モーテンセン(アラゴルン)

Q: 今は撮影が終わってうれしいですか?

まあね。でも、ちょっとさみしいよ。多分、時間が経てば実感がわくと思うけど。でも、終わりがあるからこそ、これらのこと全てが消えていくからこそ、この経験が特別なものになる。いろいろな意味で、原作と似ている。結末に勝利はあるけれど、死も描かれているよね。それに、自分や自分の愛する人たちが受ける影響と言ったら・・・。誰もが変わり、誰もが少しは傷つき、誰もが人生に傷を受ける。ちょうど今の僕たちのように。僕がこの物語で最も惹かれた点の一つは、全ての問いに答えが与えられているわけではないというところだと思う。単純なハッピーエンドじゃない。幸福もあるが、悲しみも描かれている。

Q: では、アラゴルンの役作りにはどのように取り組んだのですか?

原作を読んだし、ピーターや脚本家たちの話も聞いた。でも基本的には、原作と脚本と経験、それに、トールキンの本の土台となっている、特に北欧の文学や神話などから得たものを取り入れた。この物語と登場人物がなぜ人々にこれだけ好まれるかというと、一つには、ストーリー自体が、何千年もの間人々が語り続けてきた話と同じだからだと思う。興味深いのは、砂糖でくるんだような結末じゃないということ。単純なストーリーじゃない。それに、ヒーローはたった一人じゃない。主要人物の数だけヒーローがいる。彼らは皆困難に直面する。皆落ち込んだ時期を経験するが、彼らの生き方がより良いものになるのは、これを乗り越えようと努力するからなんだ。ただし、それには必ず代償が伴う。これらは全て、どの国の人々にも理解できる話なんだ。

Q: 『二つの塔』の延長版はご覧になりましたか?

うん。ほんとにたくさん追加されているね。映画ファンとして記憶しているのはそういう細かい点だし、そういう部分が大事だと考えている。『二つの塔』でヘルム峡谷の戦いと同じぐらい印象的なのが、ああいうちょっとしたタッチなんだ。それを見ると、ずっと昔の出来事を立ち聞きしているような感覚になる。リアルなんだ。もちろん、そういう細かい点がなくてもこの映画はすばらしいが、様々な関係に気づかないでしまう。どちらの映画でも、歴史上観た人々の記憶に残るのはきっと延長版の方だと思う。

Q: 追加撮影はいかがでしたか?

いくつかのシーンを撮影したよ。例えば、レゴラスと一緒のシーン。もちろん彼はここにいないから、普通は一片のテープとかテニスボールやゴルフボールが相手だったよ。あるいは、マットボックスの上の小さな×印とかね。今週は何回か、ミナス・ティリスの都市全体が一個のテニスボールだった。それから、死者の軍とその王とのシーンや、テープやテニスボールの形をしたあらゆる人たちとのシーンも撮影した。だから、実際に本物の人間が大勢いるシーンの時は、全然違ってくるんだ。

Q: ピーター・ジャクソン監督はトールキンを超えたと思いますか?

いや、ピーターは新しい解釈を与えただけなんだ。もちろん、トールキンが『ベオウルフ』など、彼が下敷きにした数多くの物語にまさると言うつもりもない。彼はただ、古い物語の埃を払い、一部新しい命を吹き込み、独自のイマジネーションをちょっぴり加えたんだ。ピーターもそれと同じ事をした。つまり、彼はこの原作を取り上げ、21世紀初めの人々のためにそれを蘇らせた。ちょうどトールキンが、12世紀またはそれ以前の物語を、20世紀中頃の人々にとって興味深いものに作り上げたように。それは新しく作り直すことであって、大切な作業なんだ。そうしなければ、原作は死んでしまう。ピーターがトールキンよりすぐれたことをしたか否かを語るより、彼が立派に仕事を行ったと僕は言いたい。その仕事とは、古い物語を新しい観客にふさわしいものにすることなんだ。

Q: 人々は主にどんなことを考えながら『ロード〜』を観ると思いますか?何かお考えは?

観客はこの物語を、自分自身の生き方と結びつけて考えることができる。ここには一人として完璧な人物は登場しないから。どの登場人物も疑いや障害を抱えている。中には生き残れない者もいるし、人よりうまくやれる者もいる。しかも、原作が終わり、三部作が終わっても、物語は終わらない。一人一人に、その出来事の結果がもたらされる。以前より賢くなる者がほとんどだが、そうした経験の結果、無傷でいられる者は一人もいない。そんなふうに考えていいと思う。そして、死や苦しみ、人生の傷跡といったつらい事にも背を向けない物語だということも。ある意味、指輪がモルドールに運ばれるかどうか、本当はどうでもいい。旅の仲間の誰かが最後まで生き残るのかどうかもどうでもいい。大切なのは、自分のことは忘れて、みんなで力を合わせて努力した結果どうなったかということなんだ。

translated by estel