La Nacion  2003.8.31 TORn のスキャン
The King of Men

彼はアメリカ人だ。しかし、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作でアラゴルンを演じるこの俳優は、子供の頃11年間アルゼンチンに住んだ後も、この土地で身に付けた習慣をなくすことができない。また、なくそうともしない。詩人、ミュージシャン、そして画家であるこの信じ難い男は、三部作の最終章を引っ下げて、11月にブエノスアイレスにやって来る。

彼のスペイン語は、そのアクセントを保とうと必死なブエノスアイレスっ子のようだ。

「アクセントを失くさないようにするためなら、何でもするよ。」 彼は、何か重大なことにチャレンジすることを決意したかのように言う。『ロード・オブ・ザ・リング』のヒーロー、アラゴルンを演じるヴィゴ・モーテンセンは、チャコやブエノスアイレスなど、この国に11年間住んでいた。

「当時のことをよく覚えているよ。実を言うと、22年経ってからアルゼンチンに戻った時、パレルモで住んでいた家を真っ先に探したんだ。」 彼はそう告白する。

この44歳の俳優が、『マルティン・フィエロ』(19世紀のアルゼンチンの詩文)とJ.R.R.トールキンの不朽の名作との共通点を、どのインタビューでも強調し、地元サッカーチーム、サン・ロレンソのシャツ(全員のサイン入り)を、フォトセッションのたびに誇らしげに見せる理由は、このような発言からもはっきりと分かる。アラゴルンと同様に謎めいたモーテンセンは、単なる「ルックスの良い俳優」(彼をセックスシンボルとして売ろうとする人々を嘲笑する時に、彼が好んで使う言葉)ではない。彼は画家であり(彼の作品の一部は『ダイヤルM』で見ることができる)、ミュージシャンであり(複数のCDを編集している)、焚き火(焚き火の回りに座り歌や話をする習慣がある)の匂いと、彼の詩パリジャーダ(バーベキュー)の言葉にできない一節の中にあるチミチュリ(肉用のスパイス)の味を放つような詩人である。

シュガーレスのマテ茶と、映画撮影のお供である自家製のドゥルセ・デ・レーチェに囲まれ、『王の帰還』のプロモーションの真っ只中である11月に、アルゼンチンを訪れるというアナウンスに、モーテンセンは喜ぶ。「何も見逃したくないよ。」 ブエノスアイレスっ子は、はやる思いでそう言った。

translated by yoyo