Jyllands-Posten  2003.4.7
Nye falsknerier 書評

By Erik Svendsen

デンマーク生まれのヴィゴ・モーテンセン。彼の詩は、「ロード・オブ・ザ・リング」で見せた魅力的なヒーロー像に匹敵するほど素晴らしいだろうか? もし、はっきりYesと言えば、嘘になるだろう。彼は説明過多の方向へ傾き、それによって、読者の自由な解釈を奪い取って固定観念を植え付けてしまう。例えばこんな作品がある。‘Blod lober/travlt i/bla kindben/under din/foruroligende/hvidhed’(原文‘Blood runs/busy in/blue bone/under your/alarming/whiteness’「Recent forgeries」のP.89に掲載されている詩の後半部分)オリジナルの英語版がどんな風になっているかわからないが、なんにせよ、‘foruroligende’(英語のalarming/「不穏な」「心配な」という意味)という言葉をこの詩に使うのは愚かなことだ。この言葉を使ったことで、この詩はある意味、‘hvidhed’(英語のwhiteness/「潔白さ」「純粋さ」という意味)を失ってしまったのだから。

この本は、冒頭に詩集であると記されている。かなり多くの文字数であるにも関わらず、散文の体裁というよりも、小さな箱形に収めるようなレイアウトになっている。回りくどい詩的な言葉を使っている作品もあるが、どちらかというと、小さな出来事を断片的に描いたものや、ショートストーリー、寓話や神話など、物語風の作品が多い。

これらの作品で使われている‘I’は、明らかに架空の“私”である。好奇心からスーパースターの本を読んでも、このスターの心境を知ることはできない。そこにいるのは、俳優としての“私”であり、ヴィゴ・モーテンセンは、簡潔にまとまった散文の中で、不吉で暗い人生を、うまく表現していると言えるだろう。

例えば、“Brev fra Nebraska”(原題「Letter from Nebraska」)の悲惨さ、LAから聞こえてくる評判、“Stafet”(原題不明)や“Show”(原題同じ)で描かれているような周囲の状況などが示すもの。“Stafet”や“Show”からは — 少しばかり好意的に、J.V.イェンセン(訳注:ノーベル文学賞を受賞したデンマーク人の作家)への感謝を込めて言うなら — ショービジネス界での生活への批判が読み取れる。驚かされた作品としては、他に“Frokost”(原題「Lunch」)がある。恋をしている女性と過ごしたひとときについて語られているもので、乾ききった生活を送る会社員は、情熱を抑えることを学ぶのだ。

この本のタイトル「Nye Falsknerier」(原題「Recent Forgeries」/直訳すると「最近の偽造品」)は、この本を考察する上でのヒントとなる。ちょっとした自己欺瞞とも思えるし、それだけではなく、モーテンセンの絵画の複製が掲載されているという意味にも取れる。この本には、6点の美しい絵画が掲載されているのだ。このクリエイティブな人物が、絵を描くことに対して愛情を持っているのは明らかである。彼の絵画には言葉が配され、四角、牢獄の鉄格子、らせんなど、様々な形が描かれている。叩きつけられたような色彩、走り書きのように弧を描くペン画。完成した作品は、その深さを暗示させるように複雑で、測りしれない。

結論として、ヴィゴ・モーテンセンは、偉大な言葉の芸術家とまではいかないが、“そう悪くない”と言える。

*Pernilleがこの記事を英語に翻訳してくれました。彼女は、記事の最後にある総括としての、ヴィゴは“そう悪くない”(原文ではisn't too bad)という言葉についても、説明してくれています。このフレーズは、言葉遊びのようなもので、今、TVで流れている魚のコマーシャル(とても面白くて人気がある)に使われているそうです。ものすごく控えめな物言いをするユトランド半島の人々が使い始めたもので、元の意味は“very very very good”。この記事では“he's ok, really, he is”くらいの意味で使われているようです。(なかなかやるじゃん、くらいの意味かな?)

translated by chica