Action-Adventure Movies  2004.3.2 原文
ヴィゴ・モーテンセン インタビュー

By Fred Topel

『ヒダルゴ』で主役を

about.comの写真 ヴィゴ・モーテンセンは『ロード・オブ・ザ・リング』三部作のアラゴルン役で、あっという間に名声と○ックス・シンボルの地位を得た。20年にも及ぶ俳優生活だが、この目立つ役のおかげで、女性のあこがれの的であり主役として注目されるようになった。

公式では初の主演作となるこの『ヒダルゴ』。アラビア砂漠横断3千マイルレースに参加した最初の白人、フランクTホプキンスの冒険物語で、馬好きのモーテンセンにはぴったりである。

とにかく、彼は馬といる方が気楽でリラックスするらしい。モーテンセンは、最近演じた少々威勢のいい役の時とは違い、プレスに語る時の口調は非常に穏やかである。もしかすると、彼は(ホース・ウィスパラーならぬ)プレス・ウィスパラーかもしれない。(訳者注:horse whispererは、静かに話しかけることで馬をなだめることのできる調教師のこと。)

Q: ハーモニカをやるんですか?(訳者注:写真を見ながら話していると思われる。)

うん。いや、吹いているのは僕だよ。君がこれを見て、僕にハーモニカが吹けると思うかどうかはわからないけれど。でも、楽しんで吹いているようには見えると思うけどな。

Q: アクションヒーローの役が多いですが、肉体派の役が好きなんですか?

いろいろな種類の役をやったよ。人より長くこの仕事をやっているから。もう20年にもなる。違いはあるけれど、ジョー・ジョンストン監督のストレートなクラシックスタイルの手法とピーター・ジャクソンの手法も違うけれど、ストーリーにはどこか似た要素があってね。それは、その人物の性格が試されるような試練、自分自身について学ぶきっかけとなるような試練なんだ。僕が時々見に行くのはそういう映画なんだけど、小規模なものが多いね。去年のベスト映画の一つが、『クジラの島の少女』。これも勇敢な旅の物語なんだ。とっても親しみやすくて、ある意味ちょっとしたストーリーなんだけど、神話が土台にある壮大な旅の映画だよ。感動する。『ヒダルゴ』同様、観客を旅にいざなってくれるんだ。

Q: 馬好きとして、馬に乗るシーンはほとんどこなしたのですか?

かなりやったよ。トレーナーのレックス・ロビンソンとスタントのマイク・ワトソン、それに馬たちと一緒にかなり練習した。僕は子供の頃馬に乗っていて慣れているから、彼らも危険覚悟でやってみる価値はあると思ったらしい。プロデューサー達は不安に思った時もあっただろうね。でも、他では得られないものを得るために、一か八かやってみる時もある。特に、この映画のように特撮がメインじゃない場合、ワンシーンノーカットで、カメラが僕を追うことができる。僕の動きをアップで捉えることができるんだ。

Q: アクシデントはありましたか?

僕はラッキーだったよ。かなり擦りむいたけど、ひどい落馬などはなかったから。馬の話をさせてもらえるなら、鞍なしで乗るのは別として、一番危険だったのはレースのスタートだった。100頭もの馬がいて、しかも、向こうじゃ馬を去勢しないんだ。アラブ種の雄馬が100頭。アメリカやスペイン、イングランドなどでの馬の扱い方と違って、中東では、とにかく雄馬を戦わせるんだ。彼らは、もう荒っぽくて。もともと神経質な種類の馬だしね。[スタートラインに]かたまっていた時、これから何が始まるのかを察知するや否や、馬たちは走りたがり、お互いを殺そうとするんだ。僕が乗ったのは小さい馬で、頑丈な馬だから小さい方が視覚的効果があるんだけどね。でも、小さくても立派に個性のある馬なんだ。自分ではかなりタフだと思っている馬でね、ケンカを売ろうとするんだよ。映画全体を通して、それが一番心配だった。疾走シーンならたまに恐いこともあるけど。実際、怪我をした人はいるよ。強風か何かで数テイク撮るのがやっとの時、一頭の馬がひっくり返るシーンで、下敷きになって重傷を負ったんだ。でも、5ヶ月後には復帰して、さらに乗馬をこなしていたよ。考えてみると僕らはラッキーだったよ。このレースのスタートシーンはレックス・ピーターソンの悩みの種で、撮り終えた時は本当にほっとしたみたいだった。

Q: ヒダルゴ役の馬との絆はどのように?

絆のあるなし以前に、これがとにかく彼の仕事だったということさ。リハーサル中の彼は、「食べたいんだよ〜」ってな感じ。で、カメラを回して何か始めると、僕らはこう言った。「へぇ〜驚いたな、すごいよ。今のちゃんと撮れた?ピントは合ってた?ん、ラッキー。台本にないけど、いいんじゃない?」 でも、一度だけじゃなくて、彼はいつもこうなんだ。僕たちも、これが全くの偶然じゃないってことに気がついた。彼はとにかく熱心で、しかもリラックスしていたよ。雄馬でこんなに落ち着いているなんて・・・映画の撮影現場なんて初めてなのに。それほど落ち着いていて、辛抱強く、のみこみが早くて好奇心旺盛。僕らはラッキーだったよ。

『ヒダルゴ』 vs 『ロード・オブ・ザ・リング』

Q: 特撮の多い映画の後で、ほぼ実写によるクラシックタイプの映画に出るのはどういう感じですか?

この映画がしっかりしているのは、その脚本、綿密な計画、最終結果からわかるように、ジョー・ジョンストン監督のクラシックな手法の語り口が、映画制作という点で、ハワード・ホークスの手法と似ているからだと思う。 この映画のいいところはたくさんある。でも、観客の知性を尊重するという点(が一番)だと思う。この映画を観て、単に冒険映画という枠を越えて、多くのことが得られる。ジョンストン監督は、過去の名監督のやり方を踏襲したんだ。最高の撮影責任者に最高のキャストをそろえ、すばらしい場所でロケを行い、わざわざサウス・ダコタまで出かけ、ラコタの人たちを採用し、また、こういう点をきちんと行った。そう長い時間かけずに、すばらしいバッファロー・ビルのワイルドウェストショーを作り上げたんだ。細部まで、外観もデザインもきちんとしている。でも、ある部分だけが突出して目立ってはいけない。見せびらかしもいけない。ストレートに話が伝わらなければ。そうすれば、観客が自分で様々なことを発見するチャンスも多く生まれるんだ。この映画はたくさんの層からできている。つまり、冒険映画であると同時に、何かを考えさせる映画でもある。人間は変わらないものだ、と考えさせられる。少なくとも僕は一番にそう感じるね。(中には)よし、今だ、何か新しいことをしなくては(という映画もある)。ものすごい特撮を使って、バイオレントにやろう、あるいは、派手な演技や派手な俳優を使おうって。プレッシャーを感じているのか、注目を集めたい気持ちの方が強いのか僕にはわからない。ゴシップ記事とまじめな批評との境目がますます不透明になっているのと同じさ。自分が注目されたいがために、俳優も演技もオーバーになる。それは映画にはよくないことだよ。ストーリーを伝える働きをせずに、俳優が仕事と金を得、雑誌に取り上げられる手助けをしているだけだ。確かにそれでも、時には面白い映画、笑える映画もある。でも、そんなの、何度でも観に行きたくなる映画だろうか?違うね。

Q: 役選びには気を遣っているんですか。

別に予定はないよ。今はそんなことあまり考える暇がないんだ。正直言って、毎日これ(マスコミの相手)だもの。一日が終わる頃にはくたくたで、時間なんてないよ。考える時間もない。こうやって話していて、台本なんか読めると思う?ほんとに予定なんてないよ。『ロード・・・』の後、この映画をやる予定もなかったんだよ。大作は絶対やるつもりはなかった。いつものように、刺激的な作品を求めているだけ。大作でなくても、チャレンジになるようなすぐれたストーリーが見つかるといいと思っている。あるいは、作品の方が僕を見つけくれるといいんだけど。役者としての計画のようなものはないよ。本当は持つべきなんだろうけど、ないんだ。

Q: 『ロード・・・』をどのように振り返っていますか?

今振り返ってみると、もちろん「ほぉ〜」って感じだね。でも、ほとんど無名のキャストばかりで、ギャンブルだったんだ。映画ファンも知らない役者がほとんどだったから。『ヒダルゴ』も同じ。『ロード・・・』で有名になった奴のアップのポスターで売れてるけどね。でも、この映画を観てわかると思うけど、これはアンサンブルの映画で、本当にすばらしい演技と本当にいい役者が観られる。しかも、オマー・シャリフと、わずかしか登場しないが、マルカム・マクダウエル、この二人を除いては、ほとんど知られていない人たちだと思う。でも、観客の強い反応を見ると、『ロード・・・』と同じだろうと思う。Zuleikha (Robinson), Louise (Lombard)はすばらしかった。それに、Katib役のSilas (Carson)にYusef役のHarsh (Nayyar)も 。Adam (Alexi-Malle), Peter (Mensah), 鷹を連れた男の役のAdoni (Maropis)もとてもよかったと思う。彼らは皆同じように、この映画をきっかけに、今後仕事を見つけていくだろう。これはスタジオにとってはギャンブルなんだ。彼らは、ここにいる、たまたま一つ当たった映画に出た奴の映画だと言ってる。偉大なオマー・シャリフもいる。だけど、やっぱりこれはギャンブルだと思う。そして、ジョー・ジョンストンを信用して、残りのキャストをこんな風に選んでくれてありがたいと思う。

(写真のキャプション)
『ヒダルゴ』の長距離ライダー、フランクTホプキンス役のヴィゴ・モーテンセン

translated by estel