American Western Magazine  2004.3 原文
『ヒダルゴ』 レビュー (抜粋)

by ステイシー・レイン・ウィルソン

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この映画が気に入るかどうかは、いくつかの要素にかかっている。主に、馬が好きかどうかということと、「実話」にどれだけの真実を期待するかということである。

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(「実話」をめぐる意見の食い違いに触れた後で)
しかし、『ヒダルゴ』はアドベンチャー映画であって、ドキュメンタリーではない。従って、争点の対象になるのだろうか?冒険たっぷり、根拠は薄弱の映画であるが、真に「馬」を称える映画を作った製作者は賞賛されてしかるべきだ。ホプキンスは心から彼のまだら馬を愛している。そしてモーテンセンは、心に強く迫る平静さと悲哀とでその絆の深さを伝えている。即ち、ホプキンスとヒダルゴが、観客のためにショーを演じ、砂漠横断のレースを走り、極度の危険をかわし、死んだイナゴのごちそうまで共にする時、観客は彼らが真のチームであることを実感するのである(賢者への一言:ポップコーンは早めに食べること)。

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モーテンセンのすきっ歯の顔は、日焼けと深い皺、つば広の帽子と相まって、まさにカウボーイそのものであり、その青い目は、ここぞという時に、心配・驚き・安堵の情を見せる。

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そして、ヒダルゴがいる。(実際には、マスタングではなく5頭のアメリカンペイントホースが演じ、そのうち2頭が最もおいしい部分を演じている。)「小さくてもがんばる馬」のヒダルゴこそ、この最高に心温まる冒険ドラマを観る一番の理由であろう。

ジョー・ジョンストン監督インタビュー (抜粋)

原文

by ステイシー・レイン・ウィルソン

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Q: 誰を念頭にこの映画を撮っていたのですか。子供、若者、それとも大人?

ジョンストン:経験からわかっていることだが、あまり早くからそんなことを気にして、「あらゆる人を対象とした映画を作りたい」なんて思うと、結局誰のための映画を作っているかわからなくなることがある。そうだろ?僕はいつも、趣味の異なる8人から10人ぐらいの友人を頭に置いて作ることを心がけているんだ。

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Q: ヴィゴは、この映画の撮影の間に、俳優からスターになってしまいましたね...

彼を「スター」って呼んじゃいけないよ。

Q: 本人の前ではね。

彼を侮辱することになるから。[笑]

Q: 彼が第一候補だったんですか?

その一人だった。かなり短いリストだったけどね。ダイアン・レインと共演した『オーバー・ザ・ムーン』という映画を観たんだ。この作品での彼の演技には、この男ならフランク・ホプキンスをやれるかもしれないと思わせる何かがあった。彼をキャスティングするまで、『ロード・オブ・ザ・リング』の第一部は観たことなかった。でも、ダイアン・レインにトラックでブラウスを売ることができるぐらいの男なら、何でもできると思ったんだ。

Q: ヴィゴがネイティブアメリカンではないことは気になりませんでしたか?ネイティブの血を引く人にしようと思ったことは?

今回僕にとって大事だったのは、最初に正しいキャスティングをすることだった。つまり、役にふさわしい俳優を選ぶということ。確かにフランク・ホプキンスは、半分アメリカ人で、僕の理解するところによると、髪はブロンドで青い目をしている。父親は騎兵隊の斥候だったと本人は言っている。でも、一番に考慮した点は、この役に最高の俳優をあてることだった。

Q: ヴィゴは、特に『ロード〜』では、完全に役柄にのめり込むことで有名ですが、『ヒダルゴ』ではどうでしたか?

同じぐらいだったと思うよ。やはり、衣装をつけたまま家に帰ったり、動物の世話係や馬と一緒に砂漠でキャンプもした。『ロード〜』を観た時は驚いたよ。それは...つまり、明らかに別のキャラクターになっていただけじゃなくて、別人が別の役をやっているように見えたんだ。完全に変身していた。今は、フランクT. ホプキンスを演じているヴィゴ・モーテンセンと思っている。彼が次の役を引き受ける時は、それがどんな役でも、僕には見分けがつかなくなっているだろうね。とにかく、そう、彼は本当に役になりきっていた。そしてまた、完全にこの映画に打ち込んでいた。彼はいつも現場にいたんだ。僕たちは、必要以上に彼を働かせた。彼は決して文句を言わなかったし、夜明けから日暮れまで、そしてその後まで現場にいた。この作品の全体像を作り上げたのは、主として彼のおかげだ。本当にすごい男だよ。

Q: 彼が自分でスタントをこなしたことで、保険会社から苦情はありませんでしたか?

全然なかったとは言わないよ。だけど、彼が馬に乗るのを見たら、あまり心配ではなくなったんだ。彼は、スタントマンでも難しいことを、馬上で数々こなした。落馬もしたし、鞍なしでも乗ったし、疾走する馬に飛び乗ったりもした。これは難しいんだよ。落馬したり、倒されたり、蹴られたりしたことも何度かあった。でも、わかるだろ?彼はすぐに起きあがって、もう一度やりたいと言ったんだ。本当に命にかかわるようなことだったら、「これはやる気がしない」と申し出るつもりでいたと思う。でも、実際は彼は一度もそうしなかったんだ。

脚本家ジョン・フスコインタビュー (抜粋)

原文

by ステイシー・レイン・ウィルソン

Q:ヴィゴのキャスティングをどう思いましたか?

フスコ: 完璧だったと思う。一度決まったら、どう考えても他のキャスティングはあり得ないという例の一つだね。彼は役になりきっていた。よく使われる表現だけど、ヴィゴに関しては全くその通りだよ。それに、彼についてみんながよく言う、ほら、「エゴのないヴィゴ。彼はスターではなく、アクターだ」というようなこと、それも全て本当だ。彼はそれだけ一流の俳優なんだ。彼とは12年前に、馬が出てくる『ヤングガン2』の仕事をしたが、撮影の間にアリゾナ州のメキシコとの国境まで一緒に馬で走ったよ。彼は、パット・ギャレット役のビリー・ピーターセンと馬で行く小さな役だった。ジョンW.ポーという名で、ビリー・ザ・キッドを追跡する実在の賞金稼ぎの役だ。この映画の中で若い俳優たちはみな歴史上の人物に扮していて、僕はどんなリサーチにも応じられるようにしていた。ところが、僕のところによくやって来て質問をしたのは、ちょい役のヴィゴだったんだ。たとえばこんなことを言ってきた。「あの〜、自分で少し調べてみたんだけど、当時は銅がとても重要で、ライフル銃の望遠照準器は銅で作っていた。ポーのような賞金稼ぎなら、自分の商売道具は自分で作ったんじゃないかと思うんだ。」次にまたやって来て、「ポーとジョン・チザムの関係は?彼は牛には興味あったかな?」なんて言ってたよ。だから、彼が[ホプキンスの]役に興味を示していると聞いた時、あの時のような熱心な下調べを予期した。そしたら案の定、役が決まって何日も経った頃、彼が電話してきて、こう言ったんだ。「パインリッジ居留地で君が知っている人は?僕が行ってもいいかな?」一週間も経たないうちに、彼はラコタの乗り手たちと馬で出かけ、ウーンデッドニーまで遠乗りをしていたよ。

translated by estel