Buy Magazine  2004.8 原文
ヴィゴ・モーテンセン、独占インタビュー

By Dagmar Dunlevy

ハリウッドスターらしからぬ威勢の良さで、『ロード〜』で一躍舞台に躍り出たこの俳優。オークやエルフの次は、彼が一流スターの座を確実にした映画『ヒダルゴ』について語る。

buymagazine.comの写真 何世紀もの間毎年開催されてきた、アラビア砂漠縦断3千マイル耐久レース、オーシャン・オブ・ファイアーに挑戦できるのは、最高のアラブ馬に限られていた。1890年、富裕なシーク(オマー・シャリフ)は初めて、アメリカ人フランク・T・ホプキンス(ヴィゴ・モーテンセン)と彼の愛馬でマスタングのヒダルゴをレースに招待した。これが『オーシャン〜』のあらすじであり、今後モーテンセンが幅広く息の長いキャリアを持つことを約束するものでもある。

ヴィゴは、2歳から11歳まで南米に暮らし、1969年にアルゼンチンからニューヨーク州北部に移り住む。ウォーレン・ロバートソンのシアター・ワークショップに通い、NYで役者としてスタート。ロサンゼルスに移り、監督が起用したい俳優のトップに堂々と登りつめた。このハリウッドの新しい顔は、質素ながら教養豊かなルーツを持ち、それが彼の思慮深い態度にも表れている。実生活での彼の地に足のついた性格は新鮮で、このインタビューも一層楽しいものとなった。

Q: 豊かな教養とアートへの関心により、あなたをルネサンスマンと呼ぶ人もいますが、演技があなたに与えるものは何ですか?

それは、父が世界各地を歩く仕事をしていたせいだと思う。僕と二人の弟は、数多く旅をして、引っ越しや転校も多い、そういう育てられ方をした。今の世界ではさほどめずらしくはないけれど。... 僕は今もそれを続けるようにしている。実際に各地を旅するだけじゃなく、演技というものの本質的概念をね。僕が思うに、ある場面を演じる時の基本は、「反応すること」。いい演技というのは、その場が勝負なんだ。できる限りの準備して、さあどうなるかみてみよう!というように。でも、実際には、役を演じている時は別人になりきっているんだ。そして、これも一種の旅と言える。だから、僕のそういうバックグラウンドが役立っているのかもしれないし、こういう仕事への関心にプラスになっているのかもしれない。

Q: 『ロード〜』の後、以前の生活を取り戻すことは可能でしょうか?

生活のコントロールを取り戻すってこと?それは僕にコントロールがあればの話だよ。つまり、人生っていうのは、たいていの場合、自分が許す限りコントロールできないものなんだ。今後は、常に自分自身の事に専念し、他人の事に構わないようにするつもりだ。他人に干渉されない限りはね。そうなった時は、僕も何か言ったり、何かしたりするだろうけど。とにかく、簡単には答えが出ないな。

Q: 俳優、父親、作曲家、写真家、映画スターという今のあなた、そして、映画によってはあなたのギャラは高すぎるという状況を考えると、あなたはビジネス面にどれだけの時間を費やしているのですか?

まず僕は、『タイム』とか、何か雑誌に載せてくれと言ったことはないよ。載ってもたまたまそうなっただけだし、全部が全部悪いわけでもない。一番的外れなのは、他の俳優と共演した作品をほめられることかな。心に触れるいい作品だったから出演しただけなのに。ギャラが高すぎるということについては、僕はそんなことは...僕は芝居や小規模な映画だってやろうと思えばやれるよ。大作や、自分でスタントをやってへとへとに疲れる映画だけという点に関しては、特に目標を定めているわけじゃない。今はそれだけということ。わかるだろ!(笑)何でもありだよ。そんな先のことまで予定を立てないんだ。多分、腰を据えて、少し経済的に先のことを考えるのが賢明なのかもしれない。僕ももう20歳じゃないんだから。しかも、仕事ができるのも、あとどれぐらいだろう?僕は、どういうストーリーなのかを意識するようにしている。つまり、今までどの役柄もそこまで深く追求して演じる必要はなかったんだけど、僕はそうすることに興味があるんだ。できるだけ多くのことを見いだそうと努力することにしている。それが責任あるプロのやり方だと思うから。

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Q: では、『オーシャン〜』について話しましょう。間違いなく、あなたは心底カウボーイで、馬への愛情も本物ですね。子供の頃のアイドルだった歴史上の人物はいますか。

フランク・T・ホプキンスのことを知れば知るほど...彼に興味がわくよ。彼はとても複雑な人間なんだ。ウェスタンのヒーローでは特にいない。バッファロー・ビルには親近感も興味もある。母方の家系がウィリアム・コーディとつながりがあるんだ。だから、(『オーシャン〜』は)特におもしろかったよ。...僕の家族が、バッファロー・ビルと僕が一緒のシーンを見るのはおもしろいだろうな。

Q: 事実に基づく内容かどうかをめぐる論叢がありましたね。あなたが演じるフランク・T・ホプキンス像はでっち上げだと感じている人もいるようです。あなたはどうお考えですか?

僕も注意を払ってきたよ。僕もこのストーリーに関わっているから。それに、明らかにドキュメンタリーではなく、映画であり、実在の人物や業績をめぐる出来事を描いた物語であっても、僕には関心があるから。全て(この論争の)元は、オライリーという夫妻であることに気づいた。彼らは他の国にいる時は別の名前で通っているけどね。まあとにかく。彼らが懸命になってやっていることは、かなり一方的で一時的な効果しかないものだよ。アラブ種への強い忠誠心以外に、彼らの動機が何なのかよくわからない。皮肉なことに、馬というのは、文化や境界線で区別できないものなんだ。スパニッシュ・マスタングとアラブ馬のルーツ、これらは同じ地域が発祥なんだ。スペイン人がアラブ馬を借用した。血統は同じなんだよ。そして、この物語が我々に伝えることが一つあるとすれば、それは、人はみな同じ、そして、馬も人と同じだということ。我々はつながっているんだ。それから、... 特にネイティヴ・アメリカンが語っているのを聞くと、この映画が考えられるずっと以前、何世代も前から、一人の男について語っている。彼はどうみても白人なのに、自分たちの文化や馬と関連させて語っている。彼らが何の理由もなく、わざわざそうするとは思えないんだ。これらの人々によって火がついたのが、この言い伝えなんだ。... 確か、彼の名前はLeo Runs With Buffalo (バッファローと走るライオン)、彼はモンタナからやって来たと。大勢の人々や家族が、この男について語っているんだよ。

Q: では、もっと軽い話題。あなたと馬のTJとの絆は本当に感動的です。彼とは寝たんですか?

(笑いながら)TJと寝たかって?プライベートな関係については話さないことにしているんだ...

Q: 撮影終了後は、当然二人は離れ離れですよね。

まぁ、共演者と深い仲になっちゃいけないってよく言うけど、時にはそうなることもあるんだよ。この件に関して、TJにも一部発言権はあるけど、僕が言わせてもらうと、今夜僕は必ず彼に会いに行くでしょう。そして、僕もそう思います。君の質問のおかげで、ちょっと興奮してきたよ。(ニッコリして)このストーリーは、他の動物ものの映画と違って、その動物をよく理解するようになる話なんだ。結局、この映画のタイトルは、「フランク・ホプキンスの受難」じゃない。「ヒダルゴ」なんだ。つまり、ヒダルゴとはどういう馬かという話。特殊効果による操作やデジタルのアニマトロニクスを用いた映画とは違う。それだと、ごまかしたり、人間の特徴を動物に無理に付加することになるよね。ある意味、この映画は、僕らの手には負えない部分がたくさんあった。TJの手にかかっていたということさ。

Q: ということは、生まれつき演技の才能があったということですか?

こちらでごまかすだけならいくらでもできるよ。幸運だったのは、レックス・ピーターソンが、とても一生懸命なTJに個性を見いだしてくれたこと。TJは映画の撮影現場なんか生まれて初めてだったのに。最初の週だったか、(TJがそれほどうまく演じてくれたのが)運や偶然としか思えない時があった。彼は退屈で、とにかく何にも関わりたくなかった。ところが、「アクション」と声がかかるたびに、TJは何かをするんだ。イライラしたり、嫉妬したり、いばったり、怒ったり、何かその場にぴったりのことをね。僕たちは監督を見、監督はカメラマンを見てこう言った。「今の撮った?そりゃよかった。この馬にはずっとカメラを向けておかなくちゃ。これはいいぞ!」

Q: かんしゃくを起こしたりはしませんでしたか?

もちろん、あったよ。でも、全然ひどくはなかった。彼はね、物事について自分なりの考えを持っていて、それが正しいことが多いんだ。彼が妙な顔つきをしていたことがあった。それがちょっと普通じゃなくて、しかも、ずっとそうしているものだから、僕らもこれには何かあるぞって気づいて、そのショットをちゃんと撮るようにしたんだ。何パーセントとは言えないが、明らかに、ヒダルゴという馬に関する理解の半分以上は、僕たちの力によるものでも、ジョンの脚本によるものではない。それはTJの個性によるものであり、ラッキーとしか言いようがない。

ヴィゴは本当に控えめな人!愛馬の手柄を称えてばかり。はたしてどちらが「主役」の座にふさわしいか、『オーシャン〜』のDVDをチェックしてみよう。

ヴィゴの好きな映画トップ5
  1. ベニスに死す
  2. ディア・ハンター
  3. 夢のチョコレート工場
  4. 裁かるるジャンヌ
  5. 女優フランシス
translated by estel