Metro  2004.4 原文
60秒1本勝負!

By Lesley O'Toole

Q: まさに今、ノリにノッているという感じですが。望めば、どんな映画にも出られるという状況ではないですか?

どんな映画でもってわけじゃないよ。『オーシャン・オブ・ファイヤー』に関しては、ストーリーが気に入って、きっと見る価値のある作品になるだろうと思ったから出演したんだ。『ロード・オブ・ザ・リング』の成功がなかったら、こんな機会はもらえなかっただろうね。俳優として、作品の選択肢が増えたかって意味でなら、イエスだ。今が一番、多いね。でも同時に、ものすごく忙しい。これについては、喜んでばかりもいられないんだ。

Q: 成功したことに不満があるのですか?

そうだなあ。家族や友達に会う時間があまりなくなったら、君ならどう?たまに友達に会っても、こんな感じなんだよ・・・「やあ、元気?じゃあ、またね!」。働きっぱなしだから、時間も気力もないんだ。

Q: 小さい時から俳優になりたいと思っていたのですか?

いいや。子供の頃、アルゼンチンにいたんだけど、なりたかったものは他の子たちと同じだよ。カウボーイやインディアン、ガウチョ(南米のカウボーイ)、バイキング。素晴らしいことに、『オーシャン〜』ではカウボーイになることができたんだ。まあ、厳密に言うと、伝統的なウェスタンという感じではないけどね。僕が演じたフランク・ホプキンスも、典型的なヒーローじゃないし。

Q: 原題にもなっているヒダルゴに、主役の座を持っていかれるのではないかと、心配ではありませんでしたか?

全然。ほとんどの “動物もの” の映画では、その動物の本来の姿を知ることはできないよね。今は、アニマトロニクスやデジタルで撮るのが一般的になっているから。その点、『オーシャン〜』では、馬が本当に興味深い姿を見せてくれるんだ。その内の半分くらいはT.Jがやったんだけどね。時々、すごいことをしでかすんだよ。カメラを構えたこちら側の予想をはるかに越えていた。起きているすべてのことにリアクションしたり、何か意見でも持っているようにも見えるんだ。

Q: 撮影が終わった後、彼を買い取ったというのは本当ですか?

本当だよ。昨日も会いに行ってきたんだ。ここのところ、L.Aで雨が続いていたから、なかなか会えなかったんだけど。久しぶりに会ったら、すごく汚れていてね。洗ってやったら、「いったい、何をやってるの?」って感じで僕を見るんだ。自分の周りで起こっていることに、興味津々なんだね。

Q: 彼と離れるなんて、耐えられなかった?

つながりを持っていたかったんだ。『ロード〜』でも同じように感じたから、撮影で乗っていた馬を買い取ったよ。

Q: フランク・ホプキンスは、この作品のラストで自分自身を見つけますが、あなたはどうでしたか?

ノー。それって、変化していくものだから。状況によっては、自分がどんな人間なのか、人から指摘されることもあるよね。例えば交通事故にあったりしたら、突然、“自分を見つけること” が最重要事項になる。誰かが亡くなった時もそうだね。そういう時に、改めて考えるんだ。いったい自分はどんな人間なんだろうって。自分の本当の姿なんて、普通は他人の方がよくわかっているものだよ。でもまあ、そういうことも含めて、すべてが旅の過程。僕が『オーシャン〜』のようなストーリーに魅かれるのは、厳しい試練が描かれているからなんだ。乗り越えられたら、その試練は成長につながる。

Q: 経験した “厳しい試練” を教えてもらえますか?

うーん、ひとつあるね。このインタビューだよ。試練にも、いいことはあるんだ。君が質問をして、僕がそれについて考える、みたいな。僕がこれから言おうとしていることを、もっと上手に説明できる人はいると思うんだけど、生と死について、ジョセフ・キャンベルはこんなことを言っている。「すべての人生は哀しみに満ちている。誰もそれを変えることはできないが、どんなふうに接するかを変えることはできる」。彼は、毎日がこんなふうだ、と言いたいわけじゃないと思うんだ。でも、僕らはみんな年を取って、やがては死に至る。だから、その結末は変えられないけれど、接し方は変えられるということを認めて、受け入れて、最大限楽しむことで人生を祝おうよ、と。亡くなった人たちに対しては、ただ忘れてしまったり、無視したりするんじゃなく、きちんと敬意を払うんだ。もしもジョージ・W・ブッシュが、1920年代に書かれたチャーチルとイラクとの関わりについて、何か読んでいたら、たぶん今のようなやり方はしなかっただろうね。

Q: 人生を、どう楽しんでいますか?

映画を見に行けば、そこから何かを得ることができる。でも、意識的に努力して、人生の過ごし方を考えたり、周囲の状況に注意を払ったり、広い世界とつながりを持とうとしたり……そういうことからも、得ることはたくさんあるんだ。だから、僕は切り離して考えたりはしない。問題は、“関わっていく” ことなんだ。

Q: 俳優業、絵画、詩、彫刻と、たくさんの表現方法を必要としているようですが、長い間、1本の映画だけに集中するというのは、どうでしたか?

でも、ニュージーランドにいる間、絵はたくさん描いたし、詩も書いたし、写真もたくさん撮った。映画もよく見たな。映画から、いくつかジョークも憶えたよ。もう忘れちゃったけど。どういうわけか、ジョークを憶えておけないんだ。

Q: サーフィンも練習したんですよね?

上手にはならなかったけど、海の中にいるっていうのはいいものだよ。

Q: 『ロード〜』が懐かしいですか?

そうだなあ、この映画に関することは、ほとんど終わってしまっているから、恒例になっていたクリスマス・プレゼントが、今年はもうないっていう感じかな。でも、3作目のエクステンデット・ヴァージョンは、とても楽しみ。劇場公開版では、かなりの場面がカットされてしまったからね。そういう意味では、まだ終わっていない。もちろん、友情や思い出も続いているよ。

translated by chica