The Daily Northwestern  2004.2.26 原文
Viggo-a-go-go: 天性の役者は決して休まない

By Josh Malmuth

今年始め、ヴィゴ・モーテンセンはガンズ・アンド・ローゼスのギタリスト、バケットヘッドとロック・アルバムを制作した。タイトルは「Pandemoniumfromamerica」。ホビットのイライジャ・ウッドとビリー・ボイドがフィーチャーされている。モーテンセン自身が朗読する詩のバックには、不気味なギターで綴られるサウンドが流れ、民族音楽のようなビートが刻まれている。

こうしたことは、伝統的なハリウッドの基準からは外れているように見えるが、『ロード・オブ・ザ・リング』のスター、休むことを知らない彼は今、あらゆるものの中からベストなものを吸収している。

数週間前、モーテンセンは新作『オーシャン・オブ・ファイヤー』の取材のため、記者たちに囲まれて座っていた。目の前にあるコーヒー・テーブルに靴下を履いた足をかけると、記者の質問を聞き漏らすまいと身を乗り出す。質問は、絵を描くことと演じることのどちらが好きか、というものだった。

「分けては考えていないんだ、本当に。つまり、両方とも同じ衝動が関係している。自分自身の人生に対して注意を払い、積極的に参加していくっていうことが」

彼は続ける。「役者としての僕の仕事は、映画撮影全体から見れば、ほんの一部でしかない。僕が終わったと思っても、まだ映画制作は続いているんだ。監督にとっては、素材ができ上がったという段階だからね」彼はそこで言葉を止め、自分の発言について考えていた。「それに不満があるわけじゃないんだよ。満足かというと、それもわからないけど。共同作業だから、その時々で違うしね。まだ話し続けられるけど、このへんで誰か僕を止めたほうがいいと思うよ」

モーテンセンの豊饒の角(訳注:ギリシャ神話に出てくる角で、所有者の望むものが何でも入っている)は、幅広い種類のもので溢れている。演じること、絵を描くこと、写真、音楽、詩、出版、そして冗舌な性格までも。

モーテンセンがパートナーと共に経営するパーシヴァルという小さな出版社から発行されるものは、モーテンセン自らの作品も含め、あらゆるメディアに渡っている。ウェブサイトでは、モーテンセンの作品集 “Hole in the Sun” について、“都会の裏庭にあるプールをモニュメントとして捉えた記録、そして抽象芸術作品” と紹介している。

彼の最新出演作は『オーシャン・オブ・ファイヤー』。ディズニーのアドベンチャーで、モーテンセンの言葉を借りると “ハワード・ホークスが監督したような感じの” 作品である。長距離耐久ライダーのフランク・T・ホプキンスと彼の馬ヒダルゴについての話で、彼らのアラビア半島への旅と、ベドウィン族の族長が開催するレースへの参加が描かれている。

「制作費のかかったハリウッド映画用に書かれた脚本だけど、作品の構造や話の伝え方は古いタイプのハリウッド映画なんだ。そこが気に入った」

モーテンセンは物事の全体像を見ているが、同時にディテールにかなりこだわるタイプでもある。小道具や衣装に夢中になることもしばしば。

「もし1ヶ月早く『ロード・オブ・ザ・リング』の撮影に入っていて、準備をする時間がたっぷりあったとしても、やっぱり剣を持ち歩かせてくれって頼んだだろうね。本当に手に馴染んで、いい感じで扱えるように」と、モーテンセンは言う。「もし手元に剣や鞘がなかったら、それを見つめて問いかけることもできないからね。僕は、まず考えるんだ。アラゴルンはいったい、どうやってウサギをさばいたのか。何を使って・・・そう、爪をきれいにしたんだろうってね」

彼は話題を『オーシャン・オブ・ファイヤー』に戻した。撮影中にかぶっていたカウボーイ・ハットの話である。

「帽子についている組紐の飾りは、馬の毛で出来ているんだよ。赤茶の毛はヒダルゴのしっぽからいただいた。黒い方はサンダウンという名前の馬から。映画の準備のためにサウスダコタのパイン・リッジに行った時、そこで出会った人たちと、僕が演じるキャラクターに関わりのあるような場所へ、馬に乗って出かけたんだ。サンダウンは黒い種馬で、僕らが乗っている馬のほとんどが彼の子供だった。サンダウンも僕らと一緒に出かけたんだけど、途中でよろけて倒れてしまったんだ。心臓発作だった。なんていうか、彼は、延々と続く柵を取り払って・・・」

モーテンセンは思いを馳せて言葉を止めた。

「結局、彼は衰弱して死んでしまったんだ。僕らには、どうすることもできなかった。メディシン・マン(ネイティブ・インディアンの呪医)が同行していてね、彼が祈りを捧げ、唄ってくれたんだ。その夜はずっと、みんなでサンダウンの話をした。まるで通夜に集まった親戚たちのようだったよ。この馬がしでかしたことについての面白い話や、怖い話をしてくれた。まるで人間の話をしているみたいに、この馬にまつわる色々な打ち明け話を。彼らがくれたサンダウンのしっぽの毛を、僕が組紐にして帽子につけたんだ」

インタビューが終わりに近づくと、モーテンセンは記者たち全員からひとつずつ、手短な質問を受けたいと言った。ある記者が身を乗り出し、お勧めの音楽はあるか、と尋ねた。

実に適切なことに、モーテンセンは答えを “手短に” まとめることができなかった。影響を受けた音楽や興味を持っている音楽があまりにも多すぎて、収拾がつかなくなってしまったのだ。たっぷり30秒ほど沈黙した後、自分の時計を見て、彼が笑った。

「僕の “手短” なんて、こんなもんさ」

translated by chica