Sports Illustrated  2004.8.9
スキャン (special thanks: Elessars Queen)
Q+A ヴィゴ・モーテンセン

DVD発売の『オーシャン・オブ・ファイアー』のスターは、45歳の『ロード・オブ・ザ・リング』のヒーローで熱烈なメッツファン

Q: 『オーシャン〜』は、3千マイルのサバイバルレースを戦った米騎兵隊の騎手と愛馬のマスタングを描いた作品ですね。馬に乗ることから学ぶこととは何でしょう?

馬に乗っている時は、自然の力や自分の肉体の限界だけを相手にしているんじゃない。馬という相手と、実際に気持ちが通じ合っているんだ。

Q: 今までに観戦した最高のスポーツイベントは?

1972年のミュンヘンオリンピック。チケットがなかったけど、競泳会場に巨大なガラスの壁があって、僕と何人かの子供たちで、そのガラスをよじ登ってもぐりで観戦したんだ。マーク・スピッツやゲイリー・ホール・シニアを見たよ。僕も水泳をしていたから、おもしろかったよ。

Q: 1980年のレイクプラシッドオリンピックでは、北欧のチームの通訳として働いたそうですね。どうやってその仕事を得たのですか?

NYのセントローレンス大学在学中に、外国語のできるボランティアの募集があってね。僕はデンマークに住んだことがあったから、北欧の言葉が話せたんだ。良かったのは、試合にフリーパスだったこと。毎晩アイスホッケーを観戦したよ。観なかったのは、アメリカ対フィンランドの決勝戦だけ。学校に戻らなくちゃならなかったんだ。

Q: 氷上の奇蹟と言われた対旧ソ連戦も観たのですか?

信じられなかったよ。勝って欲しいとは思っていても、絶対無理だと分かっていたからね。しかも、自分の目の前で起こったんだ、奇蹟が。まさに弱いチームの成功物語。僕が魅了されたのはそこなんだ。多分、僕がメッツを好きな理由もそこだろうね。

Q: それほどのメッツファンになったきっかけは?

僕は1969年にアメリカに来て、その年の10月、野球の特訓を受けた。その時ワールドシリーズで優勝したのがメッツなんだ。何が起ころうと、ずっと彼らの忠実なファンだよ。チームがLAに来た時は、プレーを見に行く。メッツファンでいるのは、容易じゃないんだ。分のいい側に応援するなんてことはできないし。2000年にNZで『ロード〜』を撮影している時、サブウェイシリーズを録画した人がいて、僕も夜遅く録画を観たんだ。ほんとにもう、見ているのが辛かったよ。圧倒的な負け方だった。ひどかったよ。次の撮影シーンで、もう何人か殺してやりたいという気になったよ。

SI.com  2004.8.5 原文
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SI.comからの写真 (写真キャプション)
DVD発売の『オーシャン〜』のスター、ヴィゴ・モーテンセンは熱烈なメッツファン

Sports Illustrated のスポーツ記者でライターの Richard Deitsch が、今週号のQ&Aでヴィゴ・モーテンセンにインタビュー。以下、インタビューの残りの部分。

Q: ヴァニティフェア誌があなたの特集をやった時、著者には、段ボール箱一個の資料を持ってきたそうですね。ふくろうの形をした小さな飾りが添えられた詩集が入った・・・。SI誌のインタビューには何を持ってきてくれたんですか?

え〜っと、これは電話だから、何もあげるものがないなぁ。サン・ロレンソ(アルゼンチンのサッカーチーム)のものなら何かあげられるかも。じゃ、1969年のトム・シーバー(訳者注:1969年弱小メッツを初の世界一に導いた大投手)のジャージをあげたことにしようか。そしたら君は、「これをもらえるなんて、信じられない」って言ってよ。僕が、「どうってことないよ。たいしたものじゃないから」って言うから。

Q: あなたはアルゼンチンのサッカーチーム、サン・ロレンソのファンで、4月には、額と終身メンバーズカードをもらいましたね。あなたとサン・ロレンソとのつながりは?

チームカラーが似ているし、でっかい宝箱を持っていないという意味でも、サン・ロレンソはメッツとちょっと似ている。でもまあ、たまには、ビッグな奴らをやっつけることもあるよ。

数年前、ヒスパニック系の記者と話していた時に、サッカーの話題が出たんだ。それで、このインタビューはアルゼンチンでも見られるの?と尋ね、僕が子供の頃住んだアルゼンチンの人たち、特に、サン・ロレンソファン、los cuervos(訳者注:このクラブの愛称で、鴉の意味)によろしく伝えてくれと言った。どういうわけか、クラブの広報部の誰かがそのことを聞きつけて、アルゼンチンに来ることがあったら、試合を見に来ないかって言ってきた。結局、『ロード〜』と『オーシャン〜』のおかげで、そういう機会が得られたんだ。

Q: あなたと、ミシェル・ヴァルタン、ジェリー・サインフェルドはメッツファンを公言しています。ファンになったきっかけを教えて下さい。

1969年、11歳ぐらいの時に僕はアメリカにやって来た。その年の10月、野球の特訓を受けていた時、ワールドシリーズで優勝したのがメッツなんだ。NY北部の、どちらかというとヤンキースびいきの町に引っ越したけど、あれ以来メッツは僕のひいきのチームなんだ。何が起ころうと、僕はずっと彼らの忠実なファンだよ。僕がいるときにチームがLAに来たら、プレーを見に行くよ。メッツファンでいることは、サン・ロレンソファンでいることと比べると、本当に大変なんだ。かなり辛抱強くなくてはならない。ファンとはそういうものさ。分のいい側に応援するようじゃだめなんだ。2000年にNZで『ロード〜』の撮影が始まった時、僕たちが仕事をしている時にサブウェイシリーズを録画した人がいてね。僕も夜遅く録画を観たよ。ほんとにもう、見ているのが辛かった。圧倒的な負け方だった。ひどかったよ。次の撮影シーンで、もう何人か殺してやりたいという気になったよ。あるいはせめて、どのピッチャーか殺してやりたい、なんてね。

Q: 『ロード〜』三部作でずっと使っていた剣を今でも持っていて、『オーシャン〜』の馬も実際に購入しましたよね。他に何か、モーテンセン家に散らばっているスポーツ関係の記念の品はありますか。

サン・ロレンソのチーム全員に着せて試合に出してやるだけのシャツを持ってるよ。それに、サイン入りの野球のボールを何個かと、フィリーズのユニフォームを一着持ってる。ジャージや馬を持つのはうれしいけれど、それらはあくまでも物や対象なんだ。大切なのは、自分の心の中に持っているもの。メッツファンなら、山あり谷ありの数々や、これまでに見たゲームの思い出、これらが大切なんだ。『ロード〜』から得た一番大切なものは、ほとんどのキャストとスタッフも同感だと思うけど、この映画に携わった経験だよ。

Q: 『オーシャン〜』は、1890年代を舞台にした、フランク・T・ホプキンスについての物語ですが、彼は、オーシャン・オブ・ファイアーという、アラビア砂漠横断3千マイルサバイバルレースへの参加の挑戦を受けました。そのようなレースに参加することなんて考えられますか?

ホプキンス自身が書いているところによると、ああいうレースの多くは内密に行われたので、あまり記録が残っていないんだ。当時でさえ、動物保護機関が、こういう何百マイル、何千マイルの長距離レースに頭を悩ませていたらしい。ホプキンスが優勝した有名なレースで、テキサス州ガルベストンからヴァーモント州ラトランドまでのレースがあった。こういうレースは今はもうないんだ。あれは、19世紀末ではかなり大きなものだったらしい。この国だけじゃなくて、北米全体でもね。

ホプキンスが本当に頭に来たのは、大勢の人がレースに参加して、レースが終わると、彼らの馬が駄目になってしまったこと。死ぬまで走らせたも同然だった。ホプキンスは、数々のレースに優勝したことだけでなく、彼の馬がいい状態でレースを終えたことでも有名なんだよ。...

いつか挑戦してみたら面白いだろうね。この映画の撮影終了後、イギリスやヨーロッパからいくつか招待されたんだけど、時間がなくてね。「いいですよ、参加しましょう」なんて簡単には言えないから。自分で一生懸命練習し、馬とも一緒に練習しなければならない。それに、馬に対してもフェアでありたいからね。主催者に、馬は用意するから、ただ来てくれればいいと言われたんだ。映画を観て、僕があんな風にすぐできるだろうって思っているのが見え見えだね。(笑)でも、僕は馬が好きだから、そういうのはおもしろいだろうな。

Q: 大好きな乗馬の話になると熱が入りますね。あなたの心をとらえて放さない馬というのは、一体どういうものなのでしょう。

乗馬は素晴らしいスポーツだよ。いい運動になるし、バランスを取るのにもいい。気持ちもすっきりする。みんなが、ハーレーでハイウェイを走ったり、セーリングや長距離走のことを話すのと同じさ。馬に乗るのも、馬と一緒に過ごすのも、中身はそれらと同じ。でも、乗馬ではさらに、馬との絆も得られる。馬という相手と実際に気持ちが通じ合っているんだ。僕も、物語の中でホプキンスが感じたのと全く同じ気持ちになるよ。

Q: あなたのお母さんのグレースは、バッファロービル・コーディーの子孫、でしたよね?

ワイオミング州コーディーに、バッファロービル歴史センターという素晴らしい博物館があってね。平原インディアンの手工芸品や絵画では、最も優れたコレクションがある。15年か20年前に、そこの研究図書館に行って、ファイルを眺めていたら、家系図の子孫のところに、僕の母とその姉妹、僕のおじの名前を見つけたんだ。もう、すごいことだったよ。しかも、『オーシャン〜』の中で、バッファロービルと一緒のシーンがあったんだから、おもしろいよね。

Q: 『オーシャン〜』や『ロード〜』のようなきつい役をやるのに、体を鍛えているんですか?

みんなと同じように、僕も怠けることがある。だから、運動するのに、目標とか期限とか理由があるのはいいことなんだ。運動を始めたり、野外に出ると気分がいいよ。ハイキングや水泳、走るのも好きだし、サッカーをするのも好きなんだ。

Q: そう言えば、『ヒダルゴ(原題)』に主演したのがあなたで、そのあなたのひいきのチームが、最近リチャード・ヒダルゴ外野手を獲得しました。我々の読者が、この奇妙な接点に何か意味があると考えてもいいでしょうか。

ああ、メッツにとっては良い前兆だと思うよ。とにかく期待するしかないね。僕は永遠の楽観主義者なんだ。メッツファンなら、そうならざるを得ないよ。

translated by estel