Toronto Star  2004.2.3 原文
モーテンセン、アラゴルンにさようなら

By ピーター・ハウエル

TheStar.comの写真 (キャプション)
そう、確かにこれがLotRのぼさぼさ頭のいい男。彼を一躍○ックス・シンボルにしたファンタジー三部作から卒業し、本来の自分に戻ったヴィゴ・モーテンセン。次回作の宣伝のため訪れたトロントで。ディズニー(ママ)の馬の映画、「ヒダルゴ」は来月公開。

ヴィゴ・モーテンセンは、野蛮なオークを剣でやっつけ、野生馬で疾走することができる。

しかし、LotR及び公開間近の「ヒダルゴ」の思慮深いヒーローに、アカデミー賞への非難を期待してはいけない。「指輪」の出演者がオスカー候補にならなかったことが、インターネットで大騒ぎになっていることは知っている。しかし、正直、自分も含め、出演者の誰一人として、オスカーを欲しがっているわけではないと思っている。

「指輪」ファンタジー三部作最終章の「王の帰還」は、作品賞、監督賞(ピーター・ジャクソン)を含め、最多の11部門にノミネートされており、今月29日の授賞式では、かなりの健闘が予想される。

勇敢な戦士アラゴルン役のモーテンセン、忠実で勇気のあるサム役のショーン・アスティン、献身的な指輪保持者フロド役のイライジャ・ウッド、非常に狡猾なゴラム役のアンディ・サーキス。これら重要な演技に対し、批評家及び一般大衆からの賞賛をよそに、俳優からは一人もノミネートされていない。

「激怒する人もいるが、僕は、オスカーはまた別だと思う。」3月5日公開の新作「ヒダルゴ」の宣伝で、昨日トロントを訪れたモーテンセン(45)はそう語る。高貴だがむさ苦しいアラゴルン姿を長い間見てきたせいか、髭を剃り、髪の短い彼を思わず見返してしまう。

「この映画を観て思ったのは、監督の一番の関心であるサムとフロドをはじめ、僕のやったアラゴルンも他の役も、どう見ても、かなり微妙な点、細かい点まで表現する演技とは性質が違うんだ。監督の(ジャクソンの)ねらいも、そこじゃなかったと思う。脚本も演出もそうなってはいないし。これは、エンターティメントであり、考えさせる映画なんだ。... そういう意味で、ピーターはすばらしい仕事をしたと思う。確かに、演技はすぐれていたと思う。でも、こういう演技は、より緻密なアプローチが必要な演技、細かな性格描写や複雑な人物の絡みでもっていくような演技とは違うと思う。賞で難しいのはその点なんだ。この演技とこの演技って、比較できる?」

モーテンセンは、慎重に言葉を選ぶ人、「誠実・正直」を堅く信じる人である。LotRでの仕事を誇りに思い、この三部作を心から擁護する。しかし、正直に言って、第一部「旅の仲間たち」の演技が一番すぐれているという。

「特に、エクステンデッド・エディションがね。特殊効果とファンタジー的なもの、深い人間関係のバランスが、良くとれていた。第二、第三部と最後の部分の演出は、バランスをとることより、演技や感情をもっと大きなタッチで描き、特殊効果にもかなり力を入れたと思う。」

しかし、仮に、「王の帰還」の演技がオスカーに値すると思っても、ノミネートされるかどうか、いちいち気にしないと述べた。

「あまり考えないよ。... 予測できないことだし、誰にもわからないことだろ。気にもしていない。本来、すぐれた仕事に対して与えられる賞であるという点は尊重するけれど。でも、いい仕事をする上で、賞が役に立つわけじゃない。ある意味で、今の仕事、今やっている相手のある仕事、から目がそれてしまう恐れがあると思う。そのこと(オスカーを取ること)が頭にあると、結果を考えてしまう。それでは身が入らない。何かが欠けてしまうんだ。」

translated by estel