Total DVD #64  2004.7.8
ヴィゴ、ここに再び

『ロード・オブ・ザ・リング』のニュージーランドで18か月間馬に囲まれ、今、男の中の男ヴィゴ・モーテンセン、新作『オーシャン・オブ・ファイヤー』でモロッコに渡り、再び馬に鞍を置く

ドウドウドウ! 『オーシャン・オブ・ファイアー』(リージョン2、UK版)が いよいよ来月発売。古典的ハリウッドの冒険大作のストーリーに加え、本誌情報筋によると、ドルビー・デジタル5.1chサウンド及び特典山盛りの超豪華版となる模様。

この映画は、フランク・ホプキンス(ヴィゴ・モーテンセン)についての人間ドラマ。ネイティヴ・アメリカンの血を引く兵士だった彼は、ウーンデッドニーの戦いの悲惨さを目撃したことで軍をやめ、それ以来逃避を続ける。ある時はウィスキーに、ある時はバッファロービル大西部ショーの馬の曲乗りの仕事に。だが、彼の心に深く刻まれた罪悪感を取り去ることはできない。救いは、シーク・リヤド(オマー・シャリフ)の特使という形で現れる。ホプキンスの乗馬の腕前と、彼の愛馬、マスタングのヒダルゴの名声を聞きつけ、アラブの馬と乗り手がアメリカ人よりもはるかにすぐれていることを証明する決意を固めていたのだ。間もなくホプキンスは、過酷な砂漠の横断レースに身を投じることになる。彼は勝てるだろうか?いやそれよりも、生き残れるだろうか?

DVDが店頭に並ぶのを待つ間、totalDVDは、『オーシャン〜』のスター、ヴィゴ・モーテンセンと雑談する時間を見つけては、裸馬での疾走やオマー・シャリフのことなど、全て聞き出したのだが...

Q: ヴィゴ、『オーシャン〜』に出ようと思ったのはどうして?

最初に興味を引かれた点がたくさんあって、続けていくうちにだんだんこの仕事が気に入ったというわけ。まず、キャラクターを強調しながら、ストレートにストーリーを語るというアイディアが気に入った。確かにジョン・フォードやデビッド・リーンは天才監督には違いないけど、彼らの作品を観ると、少し風景にこだわりすぎる傾向がある。僕たちのやり方は、それとはかなり異なるんだ。それから、脚本を読んだ時、これは「伝えること」が必要なストーリーだと思った。特に、今の世界情勢を考えればね。主人公のアメリカ人が、異なる世界に出かけていき、実際に様々な異文化や生き方を積極的に学ぶ姿を観るのは貴重なことだと思うんだ。

Q: かなり乗馬が得意のようですね。ずいぶん練習したんですか?

実は以前から馬のことはよく知っていたんだ。『ロード〜』でやらなきゃならなかったということもあるけど、子供の頃よく乗っていたからね。そもそもこの映画を引き受けようと思ったのは、そのせいもあるんだ。今回かなりの技術が要求されたから、体も思い出したし、普段でも好きな馬がまたまた好きになったよ。馬のそばにいるとこんなに楽しいんだってこと、思い出したよ。僕が乗った馬も気に入ったし。特に、TJっていう名前の馬。

Q: それなら撮影にはかなり有利だったでしょう...

一番良かったのは、普通俳優にはできないようなスタントを数多くやれたこと。監督からすると、細切れにして撮らなくても、好きなだけ僕のアップを撮ることができるからね。これでいろいろ手間が省けたし、映画の流れも少しは良くなったよ。

Q: 裸馬に乗るのが好きというのは本当?

うん。乗馬の時はいつも、鞍をつけて乗る他に、鞍無しでも少し乗った方がいいんだよ。体のバランスを取るのにいいんだ。ただし、簡単じゃないけどね。ある程度準備したり、体を鍛えてから乗らないと、体にガタガタ振動がくるんだよ。『オーシャン〜』の鞍無しのシーンは、何度もやらなければならなかったんだ。もうほんとに苦痛だったよ!

Q: 馬のシーンは、映画で観るより危険でしたか?

そういう場面もあったよ。一番恐かったのは、レースのスタートシーン。たくさんの馬がいたからね。あれだけの数の馬を一か所に集めたら、トラブルのないほうが不思議。特に、相手が全て雄馬の場合はね。スタートして、あれだけのエネルギーが一斉に放たれたら危険そのものだよ。どんなことをしでかすかわからない。結局、ひどい落馬がいくつかあってね。どれほど危険か、プロデューサーたちは気づいていなかったけど、あのシーンを撮影していた日、レックス・ピーターソン(馬のチーフ・トレーナー)はしゃかりきになって働いていたよ。

Q: この映画は伝説と推測に基づいた部分が多いですよね。気になりませんか?

正直言うと、完全な伝説だったらよかったのにって思うよ。あれだけの古き良き冒険物語だからね。そうは言っても、これが実在の人物と実際の出来事を描いた映画だということが、僕にとってはとても重要なことなんだ。特に、あれだけ長い間語り継がれてきた伝説だからね。残念ながら、中には、ホプキンスの信用を傷つけようとしたり、アラブの文化が公平に描かれていないと言って、賛同を得ている人たちがいるんだ。映画を観もせずにそういうことをするなんて、ひどいと思うよ。

Q: いくつかの方面から、この映画が批判を受けていることに驚きましたか?

ノー。人間はとかく物事を批判しようとするものだから。はっきりしているのは、じっくり時間をかけてこの映画を観てもらえれば、おのずとわかるということ。ネイティブ・アメリカンとイスラムの両方のジャーナリストたちから反応があってね。この映画を観て、うれしい驚きだって言ってくれたんだ。ドキュメンタリーではないけれど、僕達は双方の文化に敬意を払う努力をしたんだ。

Q: オマー・シャリフとの共演は楽しかったですか?

楽しくないはずないよ!あの役はまさに彼にぴったりだよ。ハリウッドで活躍するエジプト人俳優というバックグランドで、東洋と西洋の両方知っている人だからね。『アラビアのロレンス』と、映画史に果たす役割を考えると、彼と共演できたのはすごいことさ。共演できただけじゃなく、デビッド・リーンやピーター・オトゥールのことなど、困らせるくらい質問したんだよ。あの時は知らなかったけど、彼は馬好きでも有名なんだ。お金を稼ぐたびに、馬を買う気でいるんじゃないかな。特に競走馬をね。

Q: 撮影は大変だったようですね。どうやって集中していたんですか?

たくさん物を書いたし、写真もかなり撮った。一部は展示したよ。カメラを2つほどこっそり鞍袋に隠して、乗り手と馬の両方の視点からたくさん撮ったんだ。周囲の様子を知る一つの方法、一つの良い方法だということを発見したよ。

Q: 最後に、なぜ『ロード〜』のすぐ後に『オーシャン〜』に出ようと思ったの?

う〜ん、そうなってしまっただけのことさ。ただ、実はタイミングがそれほどぴったりというわけじゃないんだ。実際、『旅の仲間』の公開直後にフランク・ホプキンスの役を得て、『二つの塔』の直後には撮影に入っていたんだ。撮影中に『ロード〜』のインタビューを受けたこともしょっちゅうあったし、『オーシャン〜』のリハーサル中に、ニュージーランドで『ロード〜』の追加撮影したこともある。立ち止まって考える暇もなかったな。

『オーシャン〜』のDVDは8月16日に駆け足で発売。レビューは次号totalDVDで乞うご期待!

translated by estel