El País  2005.3.3 原文
謙虚な男、ヴィゴ・モーテンセン

ヴィゴはつい先頃までレオンにいた。彼が演じる役の歴史的なルーツを理解するためらしいが、彼にとってはとても重要なことのようだ。El Paísに記事を掲載したレイナ・アンアのおかげで、この土地のレストランで起こった北アメリカの俳優に関する面白いエピソードを読むことができる。どうやら、ヴィゴのルンペンのような側面は、キャプテン・アラトリステを演じるにはパーフェクトのようだ。ところで、もし私がこのレストランのウェイターなら、いまだに地団駄を踏んでいることだろう。

『ロード・オブ・ザ・リング』でアラゴルンを演じたヴィゴ・モーテンセンは、キャプテン・アラトリステの役の下調べをしに、一人お忍びでレオンを訪れた。アルトゥーロ・ペレス・レベルテが作り出したこのキャラクターは、アグスティン・ディアス・ヤネスの監督で映画化され、月曜から撮影が始まる。長い髪と大きな口ひげをたくわえたモーテンセンは、カジュアルな服装でレオンの街を歩き、史跡のある地域のダウンタウンにある書店を訪れ、バリオ・ウメド(Barrio Húmedo)でワインを飲んだ。ほとんど誰にも気づかれることなく。

この北アメリカの有名俳優はあまりに上手く身を隠していたので、大聖堂の隣にあるスロアガ(Zuloaga)レストランに入った時も、熱烈なファンにすらまったく気付かれることがなかった。彼は、ウェイターの前で長いこと沈黙し、しばらくしてほぼ完璧なスペイン語で地元のワインを注文した。ウェイターのナチョは、このコワモテのよそ者をレジのすぐ近くで1人にさせておくのがこわかったが、それでも “なんとなく見覚えがある” と思った。モーテンセンは、モルシーヤ・ケバブ(pincho de morcilla)を食べ、ワインを飲んだ。1.5ユーロのところを5ユーロ札で払い、おつりはチップとした。(訳注:一般にスペインでのチップは非常に安く、微々たるものだそうです) 俳優は、店に入ってきた時と同様に、静かに、注目を浴びないように店を去った。あやしげな客が、気前の良い客となった。レストランの奥に座っていた客だけが、こわごわと叫んだ。「あれはアラゴルンだ!」

夜な夜なこの俳優の淡い色の瞳を夢見ていたシェフのマリビは、彼を一目見るという一生に一度のチャンスを逃した。彼女は、目の前にいた男をヴィゴだと気付かなかったナチョに、いまだに怒り心頭である。

translated by yoyo (special thanks: VivaVieques)