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『ロード・オブ・ザ・リング』 秘話

4. ストライダー: 運命の助けとヴィゴ・モーテンセンという人について

ピーター・ジャクソン: 結局、運は自分の手で切り開くものさ。そうすれば、運命が味方する。最終的にヴィゴでいこうと決めた時、運命は我々に温かい手を差し伸べていたんだ。今思うと、ヴィゴはこの映画にはパーフェクトな人物だった。どこからともなく現れたと思ったら、突然アラゴルンがそこにいたのだからね。

ジョン・リス=ディビス: 彼には本当にクレイジーなところがある。

ジャクソン: 本当に危うい状況だった。ホビットたちが「躍る子馬亭」に到着するシーンを撮影していた。部屋の隅にはアラゴルンが座っていなければならないのに、僕はまだアラゴルンを誰にしようかと考えていたのだから。

バリー・オズボーン(プロデューサー): ヴィゴは遅れて参加したが、献身と役への理解を示し、それは特に若いキャストには手本となった。これがオーランド・ブルームの映画初出演だということを忘れてはならない。ヴィゴは、演技の面でも貴重だったが、キャストのリーダーとしても貴重な存在だった。

オーランド・ブルーム: ヴィゴはアラゴルン役には完璧だった。敢えて言わせてもらえば、彼は役者としても完璧だ。彼こそ本物の男だと僕は思う。

ジャクソン: 短期間でアラゴルンを探し出そうと思って、たくさん映画を観たよ。その一つがGIジェーンだ。フィリッパとフランがヴィゴの短パン姿に魅了されたんだ。とにかく、彼ならぴったりだと思って、僕らも少し聞き込みをした。それが木曜日。次の火曜日には彼が必要だった。飛行機に乗って、まっすぐここに来てもらわなければならなかった。その時、僕らは小耳にはさんだ。彼は細々としたことにうるさい役者で、好みもかなりやかましく、なかなか返事が決まらない人だと。彼の関係者曰く、「全く見込みはないよ。」

ヴィゴ・モーテンセン: 僕は遅れて選ばれたので、よそ者という気がした。最初に他の役者に割り当てられていた役をやるのも初めてだった。スチュアート・タウンゼントと比べていいとか悪いとかが、僕がこの役をもらった理由だとは思わない。スチュアートはすばらしい役者だ。彼にはすぐれた作品をやるのにまだまだ先がある。それより問題は年齢だったんだ。アラゴルンの方が年上だからね。単なる配役のミスさ。

ジャクソン: 僕たちは電話で話した。かなりぎこちない会話だった。ヴィゴはとても控えめだからね。あれこれ難しい質問をしてきたんだ。僕にも答えられない質問をね。アラゴルンの心理状態だとか、生い立ちだとか。わからない時は、答えをでっち上げたよ。話が半分進んだところで、長〜い沈黙があった。電話が切れたかと思ったよ。これじゃだめだろうと思った。最後の最後に、電話の向こうの声がぽつりとこう言ったんだ。「じゃ、多分、火曜日にまた。」

モーテンセン: 僕らは時には埃にまみれ、時には凍えるほど寒く、また死ぬほど熱かった。全く気持ちのいいものではなかった。そこがこの映画のすばらしいところなんだ。本物だという気がした。

ジャクソン: ヴィゴ=アラゴルンだったから、以前のように、彼をアラゴルンじゃないヴィゴとして見るのは難しかった。彼のように、役者が役の精神にまで入り込むのを見たことがない。

ショーン・ビーン: 撮影期間中、彼の私服姿を見た人はいないんじゃないかな。

モーテンセン: 自分がどうなってしまったのかわからないが、とにかくこの役に完全にのめり込んだ。僕は一人離れているのが好きで、森や山を長時間かけて歩くのが好きな人間だ。アラゴルンも同じ。僕たちはぴったり合うんだ。

ジャクソン: 当時11歳だったヴィゴの息子ヘンリーが『指輪物語』の大ファンだということは後から知った。ヴィゴが役のオファーのことを彼に話すと、「アラゴルンをやって欲しいって?じゃ、やらなきゃ!」という感じだったらしい。実際、ヴィゴはヘンリーのためにやったのだと僕は思う。

(その他、ヴィゴのコメントなど)

2. ニュージーランドでの撮影について

モーテンセン: 北米での撮影でなくてよかった。離れているから、ある程度安全だったんだ。

3. キャスト・スタッフの絆について

ミランダ・オットー: 男の世界という雰囲気だったけど、私もよく仲間に入ったわ。彼らの力ってほんとにすごいと思った。ヴィゴはすごい戦士よ。すばらしくて、本当に才能があるの。

モーテンセン: 映画の仕事に対する僕の見方は、昔も今も変わらない。映画というものは、ほぼ人々の協力関係と言ってもいい。

モーテンセン: スタッフが原作のファンであるのはいいことだ。給料のためだけに働いているのではないから。長い間スタッフとして働き、数々の妊娠・死・離婚・結婚・怪我を経験してもやめずに続けるのが『ロード〜』のスタッフだった。

8. ファンタジーとリアリティー

モーテンセン: ピーターは、原作を引っ張り出し、新しい命を吹き込み、他の様々なストーリーと混ぜ合わせ、自分の想像力も少し加えた。21世紀の人々のために、原作を甦らせたんだ。

9. エクステンデッド・エディションについて

モーテンセン: 延長版はより多くのことを説明してくれる。『二つの塔』で僕の好きなシーンは、オスギリアスのデネソールと二人の息子のシーン。そのシーンをカットしたら、あとはドミノと同じ。アラゴルンが帰る所はそこだから、アラゴルンにも影響する。もちろん、ファラミアにも。映画制作者が選択を迫られるのは理解できるが、あまりにも違いが大きい。延長版は、映画としてはるかにすぐれている。他の映画の延長版についても同じだよ。

モーテンセン: もう劇場版を観る気にさえならないよ。

translated by estel