Empire Online  2005.5.15 原文
クリス in カンヌ: 2005年カンヌ映画祭より
5日目: 5月15日
復讐、暴力、そしてパーティー

注:日曜日がサッカーシーズンの最終日ということで、Empireはリバプールのシャツを着ていた。クアロン [訳注:メキシコの監督、アルフォンソ・クアロン]がそれに気づいて、次の水曜日に行われるチャンピオンズリーグ決勝での"レッズ" [訳注:リバプールの愛称。チームは見事優勝した]の健闘を祈ると言ってくれた。風流な人だ。ムーチャス・グラシアス(どうもありがとう)、アルフォンソ!

クロワゼット通りからマジェスティックビーチに来て(確かにここはビーチで、"マジェスティック(荘厳な雰囲気)"だけれども、そうじゃなくて、"マジェスティックホテルで"という意味でこうなったのだ)、デイビッド・クローネンバーグが見事に復活した作品『ア・ヒストリー・オブ・バイオレンス』のインタビューを行った。この作品は、ヴィゴ・モーテンセン扮する控えめで家庭を大切にする男が、自分の過去がその戸をたたいてやって来た時に行動を起こさざるを得なくなるという話である。この知的なカナダ人監督の最近の作品と比べると、より主流に近く、よりクローネンバーグくさくないテーマとなっている(少なくとも最初に観た限りでは)。上映時間は短く(96分)、痛烈でしばしばショッキング。突如瞬間的に登場する陰惨な暴力シーン。モーテンセンと彼の妻に扮するマリア・ベロとの、啓示となり性格形成となる2つのセックスシーン。モーテンセン、ウィリアム・ハート、エド・ハリスによる見事な脅迫シーンがある、そういう作品である。

さらに、彼らは全く楽しい人たちでもあった。上機嫌でしゃれた冗談をとばすマリア・ベロ(しかも、恥ずかしがらずに済むからなのか、彼女はきらきらしたシースルーのドレスの下にジーンズを穿いているように見える)。新人のアシュトン・ホームズ(ベロとモーテンセンの10代の息子を演じている)は、酒はやらない(が、たばこはやる)ことを暴露。そして、モーテンセンは、すばらしいヒゲをたくわえて、ひいきのサッカーチーム、アルゼンチンのサン・ロレンソの不運を嘆いている。彼は叫ぶ。 「今年の彼らは最悪だ!」

しかし一番の注目はクローネンバーグである。その作品は冷淡で分析的でぞっとすることもあるが、62歳のこのカナダ人の素顔は全然違う。インタビューを始める前に、Empireの写真(「仏プレミア誌に撮れと頼まれたんだ。魚眼レンズだから、君たちみんな魚みたいに見えるかもしれないよ」 )を撮りまくり、実に暖かくて気さくな人物であった。ただし、その脳はビュイック並みの大きさなのである。

translated by estel