The Globe and Mail  2005.9.23 原文
スターの横顔: ヴィゴ・モーテンセン

By LEAH MCLAREN

ヴィゴ・モーテンセンは、一つのトリックを持っている。次から次へと続くインタビューの間、注意力を絶やさないよう、たばこの他に何か必要になった時に、自分で楽しむためにそれをしてみせる。

そのトリックとはこうである。彼はカナダホッケーリーグのペンダントを身に付けている。どこのアリーナの売店でも買える白目製のあれである。彼は、ペンダントを胸の上で表に向けて、インタビューを始める。そして、ある時点になると、そのペンダントをさっとひっくり返す。裏側には、モントリオール・カナディアンズのステッカーがついている。

「初めに、インタビュアーがホッケーファンかどうか、次に、(トロント・メープル)リーフスファンかどうか推測してみる。そして、その人がいつ気づくか待つんだ」と彼は言う。「ある時は、インタビューをやめて、”ダメ、ダメ、ダメ!”って言い出した人もいたよ。」

デイヴィッド・クローネンバーグのイマジネーションと、彼の新作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』が、特になぜそれほど素晴らしくダークなのか。この46歳の俳優の説明は、このトリックとうまくマッチする。

「うわべを取り去った時に人はどう変わるかということを、彼(クローネンバーグ監督)はいつも注意して見ているんだ。」 モーテンセンは、長々とモノトーンでつぶやきながら言う。「それは、我々がいかに自分を表に出していても、その非常に薄い層の下は、誰もが、どこかクレイジーで奇妙で、そして・・・暴力的だ、ということなんだ。」

[※以下、ストーリーに触れる部分は、一部省略してあります。]
モーテンセンは、二重性については何でも知っている。『ヒストリー〜』で彼は、自分のアイデンティティーに悩む男、トム・ストールを演じている。たった一つの偶然の出来事によって、過去が突然に戻って来たのである。

・・・彼はその役柄について言う。「彼は自分の家族を愛し、家族も彼を愛している。18年間の暮らしによって、今の彼がある。」

モーテンセンは、有名になったのが比較的遅かったが、超大作『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の主役を得てからというもの、気づくと、ハリウッドの映画スターの座にいやおうなしに置かれていた。最近では、スペインで、アグスティン・ディアス・ヤネス監督の大作『アラトリステ』の撮影を終えたばかりである。それでもどうにか時間ができて、物を書き(彼は出版歴のある詩人である)、写真を撮り(最近ロサンゼルスとワシントンで作品展を行った)、小さなアートの本専門の出版社、パーシヴァルプレスを経営している。

彼のエージェントとマネージャーたちは、彼が映画以外のことにそれほど多くの時間を捧げることに頭を悩ませているのだろうか?モーテンセンは肩をすくめて、自分は気にしていないと言う。「彼らはそうしたければ、『ロード〜』の後で、”たくさん大作をやりたまえ”って言ったはずだよ。」

彼はニッコリして、次のトリックを考えながら、ペンダントをいじっている。「実は、僕はもうすでに人生10回分の注目を受けてしまったのさ。」

translated by estel