UGO  2005.9 原文
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセン

By Daniel Robert Epstein

ugo.comより

ヴィゴ・モーテンセンは、もちろん、『プロフェシー』のルシファー役で最も知られている。まあ、『ロード・オブ・ザ・リング』でのすばらしい演技の方が、少し有名かもしれないが。そのヴィゴの最新作は、ディヴィッド・クローネンバーグによるポップな小品の傑作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』である。

UGO:ディヴィッド・クローネンバーグは偉大な監督の一人ですが、彼と一緒に仕事ができて幸運だと感じましたか?

VIGGO:うん。インターネットのどこかで読んだけど、彼は英語で最も批評がなされている監督だそうだが、僕もそう思う。彼はどの領域を追求するにしても、これだけ長い成功の軌跡を残している。常に何らかのテーマがそこにある。僕が彼について尊敬する多くの点の一つは、長い間これだけいい評を得て、批評家の受けもいいのに、彼は一つの領域やジャンルにとどまることに満足しないという点なんだ。彼は常に自分を試している。彼が知的好奇心の旺盛な人という以外、いかなる理由でも、自分のイメージやアプローチの仕方を変えようとはしない。セッgでもそうだった。毎日、撮影がどこまで進んでいようと、彼は、「さあ、やろうか。映画を作ろう」という感じで現れた。国際的に尊敬されているベテラン監督というより、まるで、最近映画スクールを卒業して初作品の監督を任された人みたいなんだ。そういう態度は、他のクルーやキャストにも広がったよ。

UGO:ホリー・ハンターは『戦慄の絆』を観て、「クローネンバーグとは仕事をしなければ」と言っています。確か、マリア・ベロも、『クラッシュ』を観てそう決意したと言っています。彼の作品を観て、「これだ。いつか彼と仕事をしよう」と思った作品はありますか?

VIGGO:物事は起こるべくして起こるものだと思う。でも、僕はずっと彼を尊敬してきたよ。実際おぼえているのは、1983年にフィラデルフィアにいた時、『デッドゾーン』を観に行ったこと。僕は特にあの映画が好きなんだ。彼があれを作ったのは22年前であるにも関わらず、HoVと対をなすような作品になっていると思う。作品のトーンや、アイデンティティの問題の扱い方とか。それに、ある意味で、家族、体制、法と秩序などといった点でも。おもしろいよね。

UGO:どうやってトム・ストールという役柄に自分を結び付けたのですか?

VIGGO:どんな役でも書かれた通りに演じてきたことは確かだけど、僕はいつも、描かれていることとは反対のこと、描かれていることの裏にあることを探すんだ。この人物はどこで生まれたのか?どんな育ち方をしたのか?友人はいたのか、いなかったのか?いたとしたら、どんな友人だったのか?家族はどんな家族だったのか?ちょっとした自分史を作ってみる。クローネンバーグは、そういうことを歓迎する監督であるという点で特別だった。彼は、映画でも実生活でも、人間の行動様式の一切は、常にどこか滑稽なものかもしれないと思っている。だから、感情面で辛く、不安な日々の仕事でかなり落ち込んだ日でも、僕たちはいつもずいぶん笑ったし楽しんだよ。彼は、ちょっと楽しんだり、ストーリーを語る際のちょっとした味付けをする機会を自分に与えているのだと思う。それは、彼のしっかりした準備のおかげで、その場で起こっていることに注意を払う余裕があるからなんだ。準備は非常に綿密で協力的に行われるので、初日の撮影開始までには、全員準備が整い、自分のすべきことを心得ている。だから、無理しなくても、他の様々なことに気づく余裕も多く生まれるんだ。

ugo.comより

UGO:この映画で、暴力がなぜあれほど陰惨に描かれる必要があったと思いますか?

VIGGO:クローネンバーグの暴力の描き方は、たいていの監督よりも、一層不安をかきたてるように描いていることだと思う。ほとんどの監督は、非常にすぐれた監督でも、もっと多くのアングルで、スローモーションで描いただろう。ディヴィッドは、必要なことだけを描き、一定の距離を保っている。この映画には、挿入ショットは少ない。トリックはあまりないんだ。非常に入念に、巧妙に作られている。彼と、撮影のピーター・サシツキーは、誰にでも起こっていることという点で、暴力をより一層目に見える形に描いている。

UGO:クローネンバーグが特にこの映画をより商業的手段として作りたかった、ということをどこかで読みました。それがこの映画の正当性や、クローネンバーグらしさに影響を与えるものではありませんが。あなたは、これは主流映画だと思いますか?

VIGGO:そう言ったのは彼のユーモアで、実際は、彼は絶対にそうするつもりはなかったんだよ。この映画は、これまでの彼の作品と同様に、もしかすると、多くの面ではそれ以上に、知的で考えさせる映画なんだ。彼の関心と彼の誠実さはこの作品でも完全に保たれている。でも、多分彼は意識してこう考えたのだと思う。「よし。これは今までより少しウケるものになるだろう」って。そう願って当然だと思う。彼の一連の作品が際立っているのは、賞とかそういった点で、公にはほぼ完全に見過ごされているからということもあるが、芸術性のレベルが高いか迯ロ立っているんだ。僕は彼の受賞を願ってるよ。彼なら当然だし。それに、この作品で多くの賞を受賞して、広く称賛されるようになっても、彼の映画の作り方は変わらないだろうと思うから。

UGO:これまでで最高のコンサートとは?

VIGGO:バッファローでのディヴィッド・ボウイ。彼は逮捕されたんだ。エレベーターの中で、とびきりの美女にね。マリファナをやりに行かないかとか何とか誘われて、逮捕されたんだ。

translated by estel