The San Francisco Bay Guardian  2006.9.13 原文
トロント国際映画祭:Viggo, we love you, yeah yeah yeah

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トロント、水曜日、午前12時09分: 今、ライアーソン・シアターを出たところ。どうやらそこで重いヴィゴマニアに感染したらしい。この病気は、アルティメット・マン、ヴィゴ・モーテンセンが近くにいると、熱が出て、頭がくらくらし、全身まぬけ状態になるのが特徴である。しかも、『アラトリステ』のプレミアで、彼はちょうど町にいる。このスペイン語のスリル満点の冒険大作で、彼は、17世紀スペインの傭兵で、題名の由来となっているアンチヒーロー、ディエゴ・アラトリステ役で主演している。

彼が愛想よく(あらゆる年齢と人種の熱狂する女性たちに、そして、不鮮明ながらそれを証明するケータイ写真もある)サインをする間、私は、劇場の外で彼を取り巻く群衆のヒステリー状態に圧倒されるどころか、顔にはいつまでもまぬけなニヤニヤ笑いを浮かべ、かなり調子っぱずれにヘラヘラ笑うので、ひと目で(そして、多分ふた目でも)頭のおかしな奴だと思われただろう。だから、彼に話しかけないようにするのが一番と決め、自分は後ろの方にいて、ぽかんと見とれていた。

劇場の中で、ヴィゴは観客にスペイン語で何か演説する(中身は全然わからないが、ステキに聞こえる)。監督のアグスティン・ディアス・ヤネス--聴衆の中にディヴィッド・クローネンバーグの姿を見つけ、彼を「世界で最も偉大な監督の一人」と呼ぶ--と数人のスペイン人の俳優がヴィゴに加わる。今では名前も全く思い出せない。彼らがヴィゴ・モーテンセンの隣に立っていたせいだ。

上映後、彼らは5分間のスタンディングオベーションを受ける。その間、ヴィゴがクローネンバーグに近づき、誇らしげにハグをする。ヤネスもそれにならう。場の空気は、オ○ニー大会の陶酔気分が充満といった感じだ。でも、全然悪くない。残念ながら、Q&Aはなく(2回目の上映にとっておくつもりらしい)、タレントたちは脇のドアからさっと外に出される。

劇場の外、雨の中に出ると、タレントには欠かせないリムジンの周りに大変な人だかりができていたが、そこから車は雨で滑る道路を、傘を持って押し合う群衆の中に流れ込んでいく(この病気は感染力がかなり増したらしい)。小柄なTIFFボランティアが、無駄とはいえ、人の群れを通りから追い出そうとする。彼女に感謝。そのすきに、もっとよく見えるように割り込んでいき、そして待つ。その間、クローネンバーグが通常の出口から出てきたが、群衆にもみくちゃにされてしまう。彼には全く見向きもせず、フランクな歓迎のし方だ(どっちみち、彼は地元の人だし)。ヴィゴ!ヴィゴ!私は頭の中でそう唱える。心臓はさらにバクバク、熱がかあっと上昇し、顔は期待で真っ赤に火照る。その時、はたと気づく。そうだ、あたしはれっきとしたレポーターなんだ。何てことを。これじゃいけない。時の人がまだ出て来ないのに、しぶしぶ立ち去る自分。クローネンバーグの後ろを歩いて行き、彼がタクシーに乗るのを見ながら、それでも考えずにはいられない...

次の2回目の上映はいつだったかな?

translated by estel