The Corner of Viggo  1999.3.25 原文
Recent Forgeries 朗読会 in サンフランシスコ

By トニー(Frosty)

午後7時くらいに到着し、レジで朗読会がどこで行われるのか聞いた。彼らは方向を教えてくれ、僕はそこへ向かった。僕は一度もヴィゴに会ったことがなかったので、少し緊張していた。階上へ行き、人で込み合った、本と歴史に囲まれた小さな部屋に入った。“親密な感じ” だと思った。部屋の最前列に友人がいるのを見つけたので、挨拶をしに行った。1つの席以外空いている席はなく、座っていいか聞いてみると、「ヴィゴの席だよ。」 と言われた。その隣には、彼の本とCDが山積みになったテーブルがあった。

既に込み合ってるその部屋に、続々と人が入ってきた。ある時点で、子供の芝居の食卓のセットに使われるかのような椅子が出された。僕は必死になってそれを取り、友人の前に陣取った。今晩の最高の席だ。僕たちはエキサイトして、即座におしゃべりを始めた。その友人たちとはしばらく会っていなかったので、旧交を温めていたのだ。久々に会えて嬉しかった。マルシアはすごく興奮していて、おかしかった。彼女はこのイベントを楽しいものにしてくれた。

ヴィゴが入ってきた。先頭まで行くのに、彼はオーディエンスの中をかき分けて行かなければいけなかった。本を2冊持っていて(1冊は『Recent Forgeries』だった)、 ガムを噛んでいた。何を着ていたかは、写真を見れば分かるよね。彼は “ヴィゴ用” の椅子に座り、本のページをパラパラとめくった。手書きの数字が書いてある、破れた黄色い付箋紙が全体に散らばっていた。

シティ・ライツ書店の人(グレッグ・プループスによく似ていた)が立ち上がり、今後のイベントについて短いアナウンスをし(ジェロ・ビアフラによるウィリアム・バロウズ・トゥリビュートは、なかなかクールだと思った)、その後、ヴィゴを紹介した。ヴィゴは立ち上がり、静かに話した。チャイニーズを食べながら考え出した、彼のファイリング・システムについて説明した。このファイリング・システムのポイントは、ナプキンに書き留めることだった。

彼は、『Recent Forgeries』から選び出した詩を読み始めた。ほとんどは、モノトーンな言葉の短い連射だった。緊張していて、シャイなように見えた。ある時点で、彼は皆がちゃんと聞こえているか確認した。部屋の後ろから、聞こえない、という声がいくつか上がった。「はい、はい、大きな声で!だね。監督がいつも僕に言うみたいに。」 彼は、そう答えた。時折、彼は詩を書いた時に何を考えていたのか、どんな状況だったのか、ということを教えてくれた。また、写真の説明や、なぜその写真を撮ったのかを教えてくれた。

部屋の前の方に思ったことをズバズバ言う人がいて、時折声を出して感想を言っていた。「シャツを脱いでよ」は、印象的なやつで、ヴィゴは笑っていた。ヴィゴはある時点で読むのを止め、リクエストがないか尋ねた。その遠慮なしに物を言う人が、“For Sandy Dennis” (p.80) をリクエストし、ヴィゴはそのリクエストが気に入ったようだった。彼はその詩を読んだ。それから、サンディ・デニスと出会ったいきさつを質問された。『インディアン・ランナー』で彼の母親役を演じたのが彼女で、それが彼女の最後の出演作になった、と彼は説明した。彼女は当時、腸癌をわずらっていた。すべてのシーンが2日間で撮影し終わること、という条件(唯一の方法)で、彼女はこの映画に出ることを承諾した。ある時、彼女は夕食にステーキを食べたいと言った。ヴィゴは癌のことを思い、しかめっ面をした。「ワインか何かの方がいいんじゃない?」 彼女にそう言った。「じゃ、ワインとステーキの両方にしない?」 というのが、彼女の返事だった。ヴィゴは肩をすくめた。「うーん。まあ、いいけど。」 彼女の名前は、謝辞 (p.10) に3回繰り返して書かれている。

ある時点で、彼は僕のお気に入り “Independence” (p.72) を読んだ。彼の朗読するペースやテンポは、ルー・リードの『Dirty Boulevard』を思い起こさせる。カッコイイ。他に彼が読んだ詩で覚えているのは、“Wading” (p.17), “Matinee” (p.19), “Clear” (p.25), “Cuttings” (p.28), “Second Opinion” (p.32), “Cursive” (p.34), “Lunch” (p.39), それに “Meet” (p.45) だ。

この話をした後、彼はもっとリラックスしたように見えた。詩も良くなったように思えた。彼はもう1冊の本から、新しい作品を読んだ。何が書かれているのかを判別しようとして、彼はいったん中断した。なぜ困っているのかを説明するために、彼は雑然とした手書きの文字で埋め尽くされたページを僕たちに見せてくれた。これらの新しい作品は、もっと長くて、鮮明なイメージで満ち溢れていた。僕は結構気に入った。彼はまた、誰かスペイン語を知っているかと聞いた後、スペイン語の詩もいくつか読んだ。誰も返事をしなかったようだが、彼は肩をすくめて、とりあえず読み始めた。彼のスペイン語は、普段の声と比べると、驚くようなコントラストだった。力強く、はっきりとして、勢いがあった。

彼は最後に、“Bedtime Story for Henry” (p.95) を読んだ。息子のヘンリーが寝る時に、即興でこの話を作ったと説明していた。ヘンリーが寝入った後も、自分も眠くなりながら話を続けた。下に行って話を書きとめられるよう、彼は頑張って起きていた。素晴らしい選択だった。

彼は質問がないか尋ね、誰かが「はい、本にサインしてくれますか?」と聞いた。彼はOKし、その人が前に来た。それが終了の合図になり、人々はぞろぞろと部屋を出て行った。他の人も、質問をしたり、本にサインをしてもらうために前にやって来た。本にサインをしながら質問に答えるヴィゴの回りには、人だかりができた。彼はとてもフレンドリーで、とても感じが良かった。

誰かが、『プロフェシー』について、どうやって役に備えたのかという質問をした。彼は、悪魔という役を本当に研究することはできないので、代わりに、全能の存在だという感覚で役を演じた、と説明した。飛び回って仰々しく演じる必要はなかった。彼は全能で、それを知っていた。そして、それがキャラクターのクールな自信になったのだ。彼は続けて、主役のトーマス・ダゲットと彼の間の、映画の中のセリフをどうやって思いついたのかを説明した。ヴィゴは小さい時、長く鋭い爪を持つドクター・モーティマーという生き物の話を聞いた。それはベッドの下にいて、いつもひっかいていて、そしてある晩、突き破って子供をずたずたに引き裂くのだ。(僕はここで身震いした。) ベッドの下にいるものにつかまれたくなくて、遠くからベッドにもぐり込むという、誰にでもある子供の頃の恐怖心だ。それから、彼は役になって、セリフを暗唱した。「トーマス、覚えているかい?私がベッドの下にいるのではないかって怖がっていた時、私は本当にいたんだよ!」 (どんなセリフだったか正確には思い出せないけど。)

また、ヴィゴは、この役をやることになった経緯を説明した。彼の友人が電話してきて、この役をやらないか聞いてきた。「いいよ、何の役なの?」とヴィゴが言うと、「えーっと、悪魔なんだ。」という返事が返ってきた。それから、撮影がいつから始まるのか尋ねた。「うーん、明日... 」 ヴィゴは飛行機の中で台本を読み、自分の役が聞いていた話より全然大きいことが分かり、驚いた。それから、最終版の映画からは、沢山のシーンがカットされたと言っていた。

マルシアからの補足(彼女はもっと後まで残っていた): ヴィゴは、フロリダのクリアウォーターから戻ってきたばかりだと言っていた。彼は次回作で野球選手を演じるのだが、そこで役の準備として、野球のトレーニングを見ていたそうだ。現在撮影中の次回作は、サンドラ・ブロックと共演で、リハビリ・センターに関する話ということだ。

以上かな。僕は友人と食事をする約束になっていたので、そこを出ないといけなかった。(実際は、その友人夫婦は部屋の後ろで僕を待っていたらしい。) ヴィゴは親切にも、Recent Forgeries に “To the Viggo Corner” とサインしてくれた。この本は、任意にプレセントしたいと思う。もし興味があれば、タイトルは Recent Forgeries でメールしてね。将来いつか、当選者を発表するから。

translated by yoyo