BBC Radio 1: Oneclick/ film  2005.5

ラジオを聴く (27分から)

第58回カンヌ映画祭から、BBCラジオ1のジェームズ・キングがお伝えしています。これまで観た中では、デイビッド・クローネンバーグの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』がいいと思います。かなり強烈で起伏の激しい、グラフィックノーベルを原作とした作品で、一人の愛情溢れる夫であり父親の暗い過去についての映画です。ヴィゴ・モーテンセンがその男を演じています。普段はファンではないのですが、この作品のヴィゴ・モーテンセンは全く素晴らしく、抑えた演技で多くを表現しています。ここカンヌのクロワゼットは、プライベートビーチを持つ派手で贅沢なホテルが立ち並ぶ通りですが、ここのマジェスティックホテルのビーチに降りて、彼に話を聞きました。

James: こんにちは、ヴィゴ。今日の気分は?

Viggo: うん、元気だよ。

J: 今年のカンヌはどうですか?前に来たことはありますか?

V: 『旅の仲間』の宣伝で来たことがあるよ。ほんとに、サーカスみたいだよね。大勢の人と、多くの変わった・・・

J: ・・・僕のような記者たち?(笑)

V: ・・・派手な振る舞い・・・。いや、君は普通だと思うよ。つまり、よほどの理由がなければ、この時期訪れたりしない所だということなんだ。今回、デイビッド・クローネンバーグと『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は、どちらも理由としては十分だよ。

J: それに、もちろんコンペにも参加しているし・・・。

V: うん。他の作品も観たの?

J: ええ。ガス・ヴァン・サントの作品を観ました。

V: どうだった?

J: カート・コバーンをヒントにした作品ですよね。(ヴィゴ:そうそう。)かなり散漫でした。

V: へぇ〜。他には?たくさん観たの?

J: ウッディ・アレンの『マッチ・ポイント』も観ましたよ。(ヴィゴ:どうだった?)ニューヨークの話だと思っていたら、ロンドンが舞台でした。かなり良かったですよ、かなり。でも、これまで観た中では『〜バイオレンス』が一番だと思います。(ヴィゴ:ほんと?それはよかった。)ほんとにすばらしい!パワーがあるし。抑制が効いていましたね、あなたの演技は。

V: ありがとう。デイビッドのおかげだと思う。一つの解決法だけに終わらないよう、やらせてくれるんだ。一つのアクションでも、連続した場面でも、緊密で感情的な場面でも、彼は物事の見方を一つに強制しないんだ。容易な答えは与えてくれない。だから彼の作品が好きなんだ。彼はドアを開けるだけで、中を見に部屋に入るかどうかは役者に任せる、という感じなんだ。観客には、時に複雑な問題を思い出して自問するようにさせる。でも、めったに答えは明かさない。言えば簡単なのに。意地悪なやり方だけど、ストーリーを語るには効果的だと思う。

J: ええ、僕もそう思いました。もう一度観たいと思っています。終わった感じがしないんですよね。

V: 何日も一緒に取り組んでいて、ストーリー前半の最初の方でほぼ毎日彼と話し合ったシーンがあるんだ。これはこんな風だとか、今はこれだとか。でも、二回目を観ると気になるんだ。ストーリーの流れの中で、これらが手がかりだと。だから、君がもう一度観る時も、そういうことを目にするだろう。おもしろかったよ。彼の元で毎日演技をするのは、おもしろいゲームのようだったよ。

J: 賞の方もうまくいくといいですね。どうもありがとうございました。

V: ほんとに、うまくいくといいけど。楽しかったよ。ありがとう。

J: 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセンでした。どうもありがとう!

translated by estel