[音楽が鳴って、5人の女性が冷蔵庫を押して登場する。中からいくつかチーズを取り出して床に置き、退場する。]
ルーク: この人は有名な俳優でもあり、詩人、ミュージシャン、アーティストでもあります。世界各地に住んだことがあり、何カ国語も話し、一番の友は自分の息子。乗馬もうまく、アラゴルンの剣も持っています。どうぞこちらへ。ヴィゴ・モーテンセンです! [拍手と歓声] チーズを運んで来てくれます!ようこそ。
[大歓声の中、ヴィゴが大きなチーズを一つ抱えて登場。床に散らばったチーズを拾い集め、2、3個客席の方へ蹴った後、テーブルまで運ぶ。司会者におじぎをし、握手をして席に着く。テーブルの上にチーズを置く。金魚鉢の前にも一つ置く。]
ルーク: ヴィゴ・モーテンセンです!
ヴィゴ: ハロー。 [観客に手を振り、投げキスをする。] ハロー、クリスチャン。[金魚に向かって] ハロー、ヨアキム。気をつけるんだよ。今日は金曜日。金曜日はみんなディナーに魚を食べるんだから。
ルーク: デンマーク語がうまいですね。僕の言ってることがわかりますか?
ヴィゴ: うん。全部わかるよ。
ルーク: 全部ねぇ〜。じゃ、朝食に何を食べたか、デンマーク語で言ってみて下さい。僕が理解できるかどうか。
ヴィゴ: ソーセージにチーズ、パン、それにカールスバーグ(訳注:デンマークのラガービール。ソーセージもデンマーク独特の種類のようである)
ルーク: それにカールスバーグ・・・か。デンマークびいきということが完全に証明されましたね。ま、とにかく英語で話しましょう。僕はデンマーク語より英語の方がうまいので。
ヴィゴ: いいよ。
ルーク: あなたの英語は?デンマーク語よりも上手?
ヴィゴ: 大丈夫だよ。(笑)
ルーク: 大丈夫ですか?...じゃ、はっきりさせておきましょう。あなたはスウェーデン人?デンマーク人?それともアメリカ人?[観客から笑い] 生まれはニューヨークですよね?
ヴィゴ: そう。ニューヨーク。 父がデンマーク人なんだ。僕もデンマーク国民だし、しばらく住んだこともあるよ。
ルーク: 10代の頃に何年か?
ヴィゴ: うん。20代の頃にも。
ルーク: じゃ、この『ロード〜』フィーバーについて話しましょうか。とんでもないですよね。全部で17個のアカデミー賞なんて。[観客から拍手と歓声。ヴィゴも拍手する。] その思い出を話してくれませんか。ニュージーランドに何年も住んだのですよね。
ヴィゴ: うん。行ったり来たりだけど。俳優たちは皆4年はいたよ。ピーター・ジャクソンは8年もこの仕事にかかりきりだったし。彼の子供たちはまだ8歳と6歳だから、そこの生活しか知らないんだよ。
ルーク: でかい図体に毛むくじゃらの男が、8年間もニュージーランドを歩き回っていたんですね。彼はそのせいでちょっとおかしくなったのですよね?
ヴィゴ: いや、それは前からだと思う。(笑)彼の初期の作品を観たことある?
ルーク: いいえ、実はないんです。
ヴィゴ: 『バッド・ティスト』とか『ミート・ザ・フィーブル』とか。ちょっと気持ち悪いけど。
ルーク: スプラッター・ムービーですよね。
ヴィゴ: そう。
ルーク: ずっと剣を持ち歩いて過ごしたというのは本当ですか?セットの外でも。
ヴィゴ: え〜っと、こういう話はだんだん尾ひれが付いていくんだよね。でもまあ、そうだよ。僕は練習する時間がなかったから、現地に着いた時、剣を持たせてほしいと頼んだんだ。それでいつも車の中に置いていたよ。ベッドの中まではちょっと・・・。時々はあったけど。
ルーク: で、剣をどうしたんですか?風呂場で稽古したとか?
ヴィゴ: え〜っと、紳士はそういうことは口にしないものさ。(笑)
ルーク: じゃ、聞かないことにしましょう。では、映画の記憶も新たに、あなたが登場する場面を少し見てみましょう。[観客から歓声。TTTとRotKの短いクリップが流れる。] あなたはヒーローですね。もう見るのはうんざりですか?この三部作には飽きましたか?
ヴィゴ: う〜ん、僕が見る時は、みんなとは違うところを見るかもしれない。バーナード・ヒルやミランダ・オットー。もちろん、馬のユレイアスも。
ルーク: でも、彼らはあなただけを見ている・・・。
ヴィゴ: (笑)つまり、僕はストーリーを見ると友情を思い出すんだ。楽しかった日々や辛かった日々をね。
ルーク: ピーター・ジャクソンはその間シャワーを浴びたんでしょうか?
ヴィゴ: さあね。(笑)
ルーク: みんなでタトゥーを入れたと聞きましたが。9人全員。[ヴィゴ、うなずく] では、あなたのタトゥーを拝見しましょうか。休憩の後・・・。[ここで突然ヴィゴが立ち上がり、ズボンのファスナーに手をかける。] ダメ、ダメ!今はダメです![会場内が騒然となる。] では、ここでCMが入ります![音楽が流れる。]
ルーク: 番組を続けます。引き続きゲストは、世界一ハンサムな男性ヴィゴ・モーテンセンです!
[カメラが後ろから二人を写す。ヴィゴは大きなチーズを取り上げ、カメラのほうに見せると、ぺろりとチーズをなめる。そしてグラスの水を飲む。ヴィゴはその後ずっとそのチーズを膝の上に置いている。]
ルーク: さきほどの話の続きですが、タトゥーを入れていますか?
ヴィゴ: うん。
ルーク: どういうものですか?数字の9?
ヴィゴ: エルフ語で9を表す文字だよ。
ルーク: どこにですか?
ヴィゴ: 片方の肩。
ルーク: そうですか。それじゃ見られませんね。それとも、シャツを脱いでくれますか?
ヴィゴ: ノー。[思わせぶりに、ちらりと観客の方を見た後] やっぱりダメだよ。ダメ。[観客から要求の拍手と歓声]
ルーク: [観客に向かって] はいはい、静粛に!
ヴィゴ: あ、いまヨアキムがくるっとターンしたよ。
ルーク: ええ。彼はへんてこな目でずっとあなたのことを見ていましたよ。
ヴィゴ: 彼にはもう一つのライフスタイルがあるんじゃないかな。[金魚をじっと見ながら] あの目にはどこか見覚えがあるなぁ。... かなり見覚えが。 ... イライジャ・ウッドとアンディ・サーキスを合わせたような目だ。 [観客から笑い]
ルーク: なるほど、その方がよかったかな。イライジャという名前の方がぴったりかもしれない。
ヴィゴ: 旅行をする時にでも。ホテルにチェックインする時とか・・・。
ルーク: そうそう。イライジャという名でホテルにチェックイン!とにかく、彼には彼の生き方があるようです。 さて、あなたはいろいろな才能をお持ちですね。それについて話しましょう。絵も描くんですね。これはあなたの作品ですね。タイトルは何ですか?[一枚の小さな抽象画をヴィゴの前に立てて置く。ヴィゴ、90度回転させて位置を直す。観客とヴィゴ、大笑い。司会者が自分の失敗に気づき、立ち上がって数回謝る。観客とヴィゴ、拍手。司会者がヴィゴと握手をして再び着席。]
ルーク: どうもすみません。ほんとにすみませんでした。
ヴィゴ: [絵をまた元に戻すふりをして、] いや、ちょっとからかっただけさ。... な〜んてね、うそだよ。これでいいんだ。(訳注:絵はそのまま。つまり、さきほどヴィゴが直したのが正しい位置。自分が間違ったと見せかけて、司会者をからかったもの。)
ルーク: で、タイトルは覚えていますか?
ヴィゴ: ノー。(笑)
ルーク: ノー?OK。あなたは写真家でもありますね。[イライジャを写した写真 "Te Anau #2" を前に置く。]
ヴィゴ: [写真ではなく、絵の方を指差して] これはニュージーランドでの作品だよ。ここにたくさん書き留めたんだ。人々や物をイメージしたんだよ。これを絵と呼ぶ人もいれば、そうでない呼び方をする人もいるけどね。(笑)
ルーク: なるほど。[写真を指して]これはイライジャですか?
ヴィゴ: そう。イライジャだよ。彼の目、わかる?
ルーク: ええ。金魚の目ですね。
ヴィゴ: とてもよく似ている。
ルーク: そして、これはあなたの詩ですね。読んでいただけますか?[今度は詩を前に立てて置く。] "Ten Last Night" by ヴィゴ・モーテンセン。覚えていますか?
ヴィゴ: ああこれね。ちょっと暗い詩じゃない?[しばらく眺めて] OK。[仕方がないとでもいうように笑って、"Ten Last Night" を朗読する。]
ルーク: すばらしい、とてもすばらしい。"Ten Last Night" でした。[観客から大きな拍手]
ヴィゴ: ちょっと『秋のソナタ』のリヴ・ウルマンの台詞か何かみたいだね。(笑)
ルーク: とても美しい!しかもこれだけじゃなく、あなたは演技もする。役者、写真家、詩人、アーティスト、そしてミュージシャンでもあるわけですよね。短い曲をかけてもいいですか?
ヴィゴ: やれやれ・・・。(笑)
[司会者が"Pandemoniumfromamerica"から"half fling"をテープで流す。]
ヴィゴ: これ、イライジャだよ。[観客に、曲に合わせて拍手を促す。]
ルーク: 何という曲ですか?クレイジーですね。何を「吸って」いたんです? [ヴィゴ、笑う。] 俳優の仕事以外で、こういうのはお金になるんですか?
ヴィゴ: うん。どれもね。特に今は、『ロード〜』もヒットしたし、『ヒダルゴ』も出だしが好調だし、みんなが興味を持ってくれるからね。
ルーク: そして、今デンマークで写真展をやっているんですよね。
ヴィゴ: いや、もう終わったよ。オーデンセでやって、その後キューバとニュージーランドでもやったよ。
ルーク: すばらしい。あなたは何でも得意なんですね。とても感心しました。さて、馬の映画の話をする前に、ここを全部片づけましょう。[机の上の物を片付け始める。]
ヴィゴ: いろいろありがとう。[こっそり二人のグラスを取り替え、知らんぷりする。]
ルーク: ダメ、ダメですよ。[グラスを元に戻す。ヴィゴ、笑う。観客から拍手と歓声。] さてと、今度は新しい映画『ヒダルゴ』が公開されます。これは馬の名前ですね。あなたは馬の持ち主でもあり心の友でもある。そして、砂漠のレースに出場するんですよね。
ヴィゴ: ヒダルゴはマスタングという北米の野生馬の一種なんだ。そして、僕が演じるカウボーイのフランク・ホプキンスは実在した人物なんだ。ヒダルゴも実在の馬で、その子孫は今もオクラホマで群れで生活しているんだよ。
ルーク: では、見ましょうか。彼が天気予報をよく読まなかったために、砂嵐に遭遇するシーンです。[『ヒダルゴ』からのクリップが流れる。] 『ヒダルゴ』でした。3月26日公開です。
ヴィゴ: このヒダルゴを演じた馬はTJと言って、僕がこれまで会ったうちで一番賢い馬なんだ。ニュージーランドでも多くの馬と仲良くなったけど、TJともとても仲良くなってずいぶん長く一緒に過ごしたよ。この馬のリアクションに関する限り、特殊効果は全く使われていない。つまり、この馬自身がおもしろいかそうでないか、ということなんだ。
ルーク: さきほどの砂嵐ですが、大きな扇風機で作り出したのですか、それとも編集によるものですか?どうやったんですか?
ヴィゴ: 僕が建物の中に馬で駆け込む場面では、じょうご形の煙突がついた大砲のようなものをたくさん用意して、何トンもの砂を詰め、馬で駆け抜けた時にそれらをぶっ放したんだ。飛ばされそうだったよ。
ルーク: [目を押さえる仕草をしながら] 「ちょっと待って、目にゴミが・・・」なんて感じですか?
ヴィゴ: (笑)この日もそうだったけど、後で手を加えた部分もあるよ。ここスウェーデンのように快晴の青空の美しい日に、特殊効果で修正しなければならなかった。つまり、いらない天気の日が何日もあるのに、一日でいいから本当に必要な天気の日がなかったり、砂嵐の日が何日もあったり・・・。
ルーク: ええ、それは映画作りのルールですよね。では、インタビューは終わりにして、ほんのちょっとでいいですから、簡単に剣の使い方を教えていただけませんか。
ヴィゴ: いいよ。じゃ、6つのポジションを教えてあげよう。
[歓声の中、二人は観客の前の広いスペースに移動。おもちゃの剣とヴァイキングの盾とヘルメットが二人に渡される。ヴィゴは剣だけ取り、あとの二つは辞退する。]
ヴィゴ: じゃ、やってみせるからね。これは必要ないよ。[司会者から盾を取り上げる。] じゃ、防御の6つの基本ポジションをやるよ。[司会者、ヴィゴの真似をする。] わかった?じゃ、ゆっくりいくよ。[1、2・・・と数えながら、剣を交える。司会者のぎこちない動作に、会場から笑いが起こる。突然司会者が攻撃に出るが、ヴィゴはすばやくそれをかわす。二人で笑いながら握手。]
ルーク: いや〜、すばやいですね。お見事。ヴィゴ・モーテンセンでした!どうもありがとう。[ヴィゴに向かって] 本当に剣が上手ですね。知らなかった。[ヴィゴと肩を組み、カメラに向かって] ヴィゴでした!