Psycho: DVD Commentary

出演:ガス・ヴァン・サント(監督)、ヴィンス・ボーン、アン・ヘッシュ

冒頭のホテルでのシーン [0:05:20 - 0:06:54]

[ヒッチコックのオリジナル版との相違点などを話している]

ヴィンス: [唐突に] それで、ヴィゴは本当にぶ〜らぶら〜(free hanging)だったの? このシーンの間ずっと。
ガスとアン: [一瞬沈黙して] ぶ〜らぶら〜??
ヴィンス: 全裸だったの?
ガス: うん。
アン: [ガスと同時に] 違うわよ。全シーンが裸だったわけじゃないわよ。違ったわ。
ガス: 違ったの?
アン: そうよ。

サイコより

ヴィンス: 今のは裸だよ。
ガス: [ヴィンスと同時に] 今のは裸だろ?
アン: 違うわ。
ガス: だけど、窓に歩いていくところは・・・
アン: [ガスの話をさえぎって] 1つのショットだけよ。別のショットよ。

サイコより

ヴィンス: ほら!これは裸だよ。
アン: えぇ、それは裸だったわ。だけど、ずっと裸だったわけじゃないのよ。
ガス: ヴィゴのコスチュームを・・・触っちゃうかもしれないって、怖くなかった?
アン: ええ、もちろん。
ガス: ふぅん、それは考えなかったな。
アン: 何か他のことを考えてるでしょ。何なの?(笑)
ヴィンス: [話をさえぎるように] ヴィゴは興奮しちゃうんじゃないかって怖がってなかった?
ガス: それはないと思うよ。
アン: それはないわ!私に?いいえ、あの部屋で私に興奮することなんてなかったわ。彼はシーンに没頭してたと思うわ。だって、私たちは・・・。
ヴィンス: [アンの話をさえぎって] シーンの間、彼は一度も興奮しなかったの?
アン: 一度もないわよ!
ヴィンス: そうゆう意味じゃなくって、バカにしてるとかじゃないんだ。だって、彼は裸で、ラブシーンをやっているし・・・。
アン: [ヴィンスをさえぎって] でも、あれは情熱的なシーンじゃないもの。
ヴィンス: そんなことはないよ。君たちは恋人同士で、性的なことを話してるし、彼は裸で、肉体的な接触もあるわけだから・・・。
アン: いいえ、彼は興奮しなかったわ。だけど、彼が裸で私が裸じゃないのは、オリジナル版が理由なの。オリジナル版では彼女はブラをしていて、それに忠実でいたかったの。それに、私たちは、男女の役割が逆になってるこのアイディアがちょっと気に入ったの。映画ではたいてい女性が裸になるでしょ。それは構わないんだけど、なんで逆の・・・
ガス: そうだね、ヴィゴは男女の役割を逆にさせるのを本当に気に入ってたね。
アン: ええ。感謝しているわ。
ガス: 裸になることに完全に賛成してくれていたよ。
アン: そのとおりね。

ヴィゴのキャラクターについてのヴィンスの見解 [1:08:52 - 1:11:00]

[ヴィゴのキャラクターについてのヴィンスの見解を要点だけ抽出しました。]

ヴィゴが演じている男は、ファックするのが好きなんだ。肉欲的でいつも性的な感じなんだ。彼女が殺されて困惑して、真実を探り出そうとしているようにも見えるけど、彼はカウボーイなのにも関わらず、伝統的なカウボーイのように、人を守ろうとするようなイメージではないんだ。彼の行動や対応を見ていると、そういったジョン・ウェイン的な保安官みたいになろうとするのは、彼の最優先事項じゃないんだ。

ヴィゴはジュリアンとも寝たいって思ってる気がするんだ。しかも、直接的にファックしたいっていうより、キャンドルをたいて、お互いにオイルでも塗ろうよ、っていうような感じでね。

ヴィゴとジュリアン [1:14:06 - 1:15:07]

サイコより

ヴィンス: ヴィゴとジュリアンのキャラクターの演じ方、大好きだよ。この2人、オリジナル版のキャラクターとは全く異なる目的を持った、全然別の人間なんだ。オリジナル版と全く同じことをしてるんだけどね。
ガス: 同じセリフなんだ。
ヴィンス: そう、セリフが同じなんだ。だけど、今ここで彼らに起こってることや、彼らが考えていることは、オリジナル版とは完全に別のことなんだ。もう一つあるんだ。彼はどうやって彼女にライトを消させて、エッチをしようかって考えているところなんだ。
アン: う〜ん・・・だけど・・・
ヴィンス: ねっ!
アン: だけど、オリジナル版では、どの人物同士でも、彼らがどんな関係なのか本当に理解することはできないのよ。それが大きな疑問の1つなんだけどね。例えば、彼らは愛し合っていたのか、それともタダ何週かに一度セックスするだけの関係だったのか、とかね。どの人間関係も決められてなかったのよ。だけど、この2人が出会った時、妹とヴィゴのキャラクターが出会った時、オリジナル版ではこの2人の間に個人的な関係はなかったの。マリオンに何が起こったのかを探り出すって以外にはね。だけど、この映画では、人々の間に関係が生まれてくるのを見ることができるわ。たとえ、ノーマン・ベイツとマリオンの間ですらね。

ポエトリー・リーディング [1:24:10 - 1:26:10]

サイコより

アン: [くすくす笑って] ヴィゴって・・・
ヴィンス: これいいよね。
アン: ヴィゴって・・・いつも・・・(笑)
ヴィンス: だけど、僕が思うには、 [ヴィゴがジュリアンの肩を組もうとしてるのは] 彼らがカップルだって僕を信じ込ませようとしてるのとは何も関係がないんだ。ヴィゴは部屋で時間をとって、ジュリアンとやりたいと思ってるだけなんだ。
ガス: 言い訳に使ってるんだ。
ヴィンス: そうなんだ。
ガス: カップルのふりをしよう、って言ってね・・・。
ヴィンス: ヴィゴはとってもセクシーで、肌のふれ合いを好むの男を演じているんだけど、僕はすごく素晴らしいと思うよ。

[ヴィゴと関係のない話が少し入るので省略します。]

サイコより

ヴィンス: 僕が言ってることが分かるだろ? [多分、ヴィゴのキャラクターがジュリアンのキャラクターとやりたがってる、ということを指していると思います。]
アン: [ヴィゴのシーンを少し見てから] そうなの、ガス?
ガス: クリス・ドイルの話でもしようかな。
アン: 撮影担当の?
ヴィンス: 彼は最高だよ。
アン: どうぞ、話しなさいよ。
ガス: じゃあ、話すよ。
アン: どうぞ。
ガス: 彼はこの映画の撮影を担当している素晴らしい人物なんだけど、彼のことを思いついたのは、彼とヴィゴはいくつかオープニングがあったんだ。2人とも自分の作品の展示会があったからね。
アンとヴィンス: そうそう、見逃したわ。 [というようなことを2人で同時に言います。]
ガス: 2つの個別のアートショーがあったんだ。それで、1つの方では彼らは詩を朗読したんだよ。
ヴィンス: ガスも行ったの?
ガス: 行かなかったよ。だって怖かったんだ。 [アンが大声で笑う。] 僕も詩を読む予定だったからね。
アン: 自分の詩を読むよう頼まれたのか聞こうと思ったところだったのよ。
ガス: ホントに行きたくなかったよ。だけど、そこでは問題が起こったようなんだ。クリスが・・・少し酒に酔っていて、オーディエンスを怒らせちゃったんだ。それで、ヴィゴは尻拭いをするはめになったんだ。
アン: 行かなくて良かったわ(笑)。
ガス: そうだね。
アン: 本当に行かなくて正解だったわ。

番外編 [1:05:50 - ]

アンはジュリアン・ムーアが彼女のキャラクターをレズビアンとして演じたことを絶賛しています。レズビアンの人が見たら、ジュリアンのキャラクターは典型的なレズビアンだとすぐ分かるそうです。でも、ストレートの人が見た場合には、レズビアンとは全然気づかないような、繊細な演技をしているそうです。

[ヴィゴとは直接関係しませんが、非常に興味深いコメントだと思いました。]

translated by yoyo