The House of Telcontar  2002.10.11 原文
Perceval Press インタビュー: ピラー・ペレスとの対談

レズリー・ウォルター

5月にロサンゼルスのヴァージン・メガストアで行われた本のサイン会で、初めてヴィゴに会った時(もしそんなことが実際に “会った” と言えるのであれば)、彼は自分で起こした新しいベンチャーにとてもエキサイトしていて、そのことについて話したがっていました。彼は、アート本を出版するこの小さな独立系の出版社を、アーサー王伝説の中の円卓の騎士の一人、パーシヴァル(*1)にちなんで名付けました。彼はまた、新しい出版社からの最初の本は、当時入手不可能であった Recent Forgeries の増刷だけでなく、2冊の新しい本を含むということも教えてくれました!言うまでもなく、彼は私たちの注意を引くことに成功し、私たちは皆 Perceval Press という名の、できたてのウェブサイトをじっと見守りました。

今まで、こんなにじっと監視された状態で作らなければならなかったウェブサイトがあったでしょうか!どんな小さなアップデートも、インターネット上で然るべく報告されました。だから、ショッピング・カート・システムがついにオンラインになった時、普通に考えられる方法で注文のスピードについていける可能性は、まったくなかったのです。皆さんのご想像通り、即座に注文で溢れかえりました。:) その裏返しとして、最近の Morphizm.com のスコット・シルとのインタビューでヴィゴも認めているように、彼らは非常に成功していると言えるでしょう。「世界の様々な地域で、これらの本を買ったり注文している人が沢山いる... 今夜のようなイベントやこの一週間で、これだけ沢山の本を売ることができるのは、ロード・オブ・ザ・リングの成功で注目されているからだっていう事実はよく分かっているよ。」

同じインタビューで、彼のビジネス・パートナーのピラー・ペレスは、こう言葉を挟みました。「私たちは何かを探しているファンでもあるの。」 明らかに、Perceval Press は、典型的は出版社ではなさそうです。好奇心を十分にかき立てられたので、ピラーにこの新しいジョイント・ベンチャーについて、いくつか質問に答えてくれるよう頼むことにしました。

Q: Recent Forgeries が売り切れになっていることを、たった今発見しました。とても驚きました。本の売り上げは、あなたの予測を上回っていますか?ヴィゴの新しい本の売れ行きはどうですか?

レズリー、私たちはこれまでとても幸運でした。Perceval Press を応援してくれたすべてのファンとサポーターに、素晴らしいレスポンスをしてくれたことを感謝します。オンライン販売をしたこの2ヶ月で(8月13日以来)、ヴィゴの新しい本も含めて、ほぼどの本も売ることができました。そして、最初の2週間に注文した人全員に感謝をしたいと思います。私たちが新しい注文を整理している間、大変忍耐強く待ってくれました。ありがたいことに、今ではすべて上手く行くようになって、とても良いフィードバックを受けるようになりました。皆様のご理解に感謝します。

Q: Recent Forgeries が “一時的に在庫なし” になってますよね。ヴィゴの本は必要だからということで、新しい版をプリントするようオーダーするつもりですか?彼の4冊の本は、これからもずっと Perceval Press のカタログに含まれますか?もしそうなら、Recent Forgeries がいつ頃在庫ありの状態に戻るのか教えてくれませんか?

はい、来週スペインで3冊の本を増刷することになっています。2、3週間のうちに Recent Forgeries が再び入手可能になると思います。本に対する関心がある限り、私たちのサイトで入手できるようにしていきます。

(もし今すぐ Recent Forgeries が必要なら、ミッドナイト・スペシャルに電話するか[310-393-292]、もし日本に住んでいるなら、イン・ロック社で注文することができます。)

Q: The Other Parade のCDも、一時的に在庫なしとなっていました。これも在庫を追加する予定ですか?ヴィゴの他のCDをカタログに追加する予定はありますか?そして、もっと重要なこととして、新しい詩の朗読CDを作るよう彼を説得できないですか?彼はとっても素敵な声をしていますよね!私が Coincidence of Memory で一つ残念だと思ったのはそこなんです。CDが付いてなかったですよね。

すべては時間の問題なんです。というか、むしろ時間がないことですね。この何年かのうちに詩の朗読CDが作られることは確かだと思います。ただ、ヴィゴは今、ヒダルゴと新しい写真集に専念しています。The Other Parade はすぐに再発行されるでしょう。そして、他のCDをカタログに追加することも話し合っています。

Q: ヴィゴの新しい本で、作成中のものが何かありますか?彼はこの夏の初めに、デンマーク語に訳した詩集を作るだろうと言っていました。来年、英語でも新しい本が出ることを期待してもよいですか?おそらく新しい展示会用として。

ヴィゴはいつでも新しい本に取り掛かっていますよ。他の Perceval Press の本も同様です。それは、私たちにとって、発見するということなのです。そして、答えはイエスです。デンマークの出版社が、もうすぐデンマーク語のヴィゴの詩集をリリースすることになっています。来年新しい展示会をやるという話は聞いていませんね。

Q: なぜ近所の書店や amazon.com のような場所で Perceval Press の本を見つけることができないのですか?近い将来、もっと色々な所で入手可能になると思いますか?Perceval Press のウェブサイトから直接本を買うほうのが良いのですか?

そうですねぇ、アメリカ全土でミッドナイト・スペシャルのような他の独立系の書店にまで拡大できたらいいと思っています。しかし、それらの店もまた、彼らのカスタマーが私たちの本に興味を持って、買ってくれるかどうかを知る必要があるのです。私たちは本当に小さな出版社なので、amazon.com で本を売ることはできません。彼らは小売価格の30%程度しか私たちに払ってくれないのです。それに、送料も払わなければいけません。だから、最終的に赤字になってしまうのです。

そうです。Perceval Press か、ミッドナイト・スペシャルのような独立系の書店で本を購入してくれる方が、断然良いです。私たちはまた、デイヴ・エガーズと McSweeney's (*2)の後を追って、彼らの本の出版観を実践しようとしています。ご存知のように、デイヴ・エガーズは「A Heartbreaking Work of Staggering Genius」の著者で、ちょうど初の小説を書き上げたところです。彼の新しい本「You Shall Know Our Velocity」は、既存の大きな出版社から出版する代わりに、 McSweeney's を通じて自己出版されました。この最近の引用がもっと上手く説明していると思います。

『“エガーズは大胆な三連単を達成した。自己出版の長い伝統に(ウォルト・ホイットマン(*3)、トマス・ペイン(*4)を考えてみなさい)、最新のテクノロジー(インターネット上で販売)を合わせる一方で、友人たち(一番古くからの、かつ最も熱心な McSweeney's のサポーターである独立系の書店)にだけ利権を共有している。” ウォール・ストリート・ジャーナルは先週こう明言した。エガーズはそれほど楽観視していない。“このスケールで上手くいくかもしれないし、上手くいかないかもしれない。どうなるか全く分からないよ。” 彼は最近のインタビューでこう語る。“ものを書くことを大切に思うなら、それがどうやって世の中に送り出されるか、ということにも気をつかうってことだよ。自己出版は、確実に自分が思い描いていた通りに出版できる、1つの良い方法なんだ。”』

最後の文は、ヴィゴの自己出版に対する思いを完璧に言い表しています。つまるところ、彼が作った本は、世の中に出て行くのと同じものなのです。

(ところで、「You Shall Know Our Velocity」はとてもお薦めです。もしお金に余裕があれば、買ってみてください。)

Q: ウェブサイト立ち上げ当初、Perceval Press で注文したものが送付されるまでに遅れがあって、そのことに少し “懸念” とでも言いましょうか・・・がありましたよね?普通の人は、“小さな出版社” が本当にどれだけ小さいのか分かっていないと思うのです。:) ビジネスを開始した途端、注文の嵐になったのではないかと想像しています!どんな感じだったか分かるように、少し説明してもらえませんか?私は、注文伝票の雪崩の中に、あなたとヴィゴが埋もれているイメージを勝手に抱いているのですが...

控えめに言っても、ちょっと圧倒されましたね。また不運なことに、ウェブサイトが立ち上がった当日、2人ともロサンゼルスを離れていたのです。当初、アナウンスせずにテスト運用したのですが、それでも注文で溢れかえりました。喜ばしいことに、今ではオーストラリアやイギリスのカスタマーから、注文して4日のうちに品物が届いているという報告を受けています。時折間違いもありますが、全体で見ればスムーズに行っているように思います。梱包と送付を手伝ってくれている、新しい仲間のおかげによるところが大きいです。今では通常、注文があったその日のうちに処理をしているので、未処理の注文がたまることはありません。

たった2人で、本が入ったダンボールを抱えて階段を上ったり下りたりして、突然決まった本のサイン会用に、ニュージーランド、それからニューヨークに本を届けようと半狂乱になって、その後結局 “あれ?この本って一体何に入れて送るつもりなの?文房具屋に行かないといけないんじゃない?” なんて言ってたことが、いつか笑い話になればいいと思います。立ち上げ当初のゴタゴタに付き合ってくれたすべての方に、もう一度感謝をしたいと思います。軌道に乗るまでには何回かクラッシュしましたが、少なくとも2002年はなんとか乗り越えることができました。

Q: では、誰が Perceval Press で、どういう生い立ちで出来たのですか?あなたたち2人がある日ただ座っていて、「そうだ、独立系の小さな出版社を起こそう!」って思ったのですか?それとも、長いこと構想を練っていたことなのですか?

去年の1月に、ヴィゴがその件で私にアプローチしてきました。それから、Track 16 ギャラリーでの展示ディレクターという私の前職で状況が変わり、私たちはさらに議論をし、このベンチャーを実行することに決めたのです。私は Smart Art Press から出版された、沢山の本の編集者をやっていたこともあるので、完璧な転身のように思えました。私は本が大好きなのです。本当に私たち2人だけなので、私たちが Perceval Press だと言えるでしょうね。また、素晴らしいグラフィック・デザイナー Michele Perez も一緒に働いています。彼は私たちのウェブサイトとヴィゴの本のいくつかのデザインを手掛けています。

Q: Perceval という名前は、アーサー王伝説のパーシヴァルから来ていると聞いたことがあります。メアリー・スチュアート(*5)の本でしかアーサー王伝説になじみがないので、パーシヴァルをよく知らないのですが、なぜ彼なのですか?

出版社を始めるにあたり、名前を探している時に、パーシヴァルの神話がたびたび思い浮かんだのです。ヴィゴは、旅に出て危険を冒し、願わくばその道のりで何かを達成しようとする騎士と、似たような道にいると感じたのでしょうね。パーシヴァルは旅に出て、何よりも自分自身について学び、そして他の人にどのように尽くすかを学びました。私たちもこの出版社を通して、その過程で何かを学び、他では出版されないであろう、本当の意味で興味深い本を出版していけるよう願っています。

Q: Morphizm.com のスコット・シルとの最近のインタビューで、ヴィゴは Perceval Pressについて少し話をしましたよね。最近の売り上げから、こう言っています。「Perceval Press は他の本も出版できるようになるよ。今まで誰も考えなかったような本をね。キューバのような異なる場所からのアートや作品といった、特にアメリカの人々が知るのが難しい、他では見られないような本について、いくつか異なるアイディアを持ってるんだ。」 これは本当に興味深いと思いますが、沢山お金を稼ぐような本には聞こえませんよね。あなたとヴィゴは、Perceval Press で何を達成しようと思っているのですか?

まったくあなたの言うとおりです。決してお金儲けになるようなものではありません。ヴィゴが言っていたキューバの本は、主にスペイン語であまり知られていないヨーロッパのアート・ジャーナルで出版された、80年代と90年代からの批評文集を再編したものです。これは、キューバのアートとアーティストたちに対する、私たちの貢献なのです。私たちは他にも、少し皆さんが驚くような本を数多く手掛けています。そして、Perceval Press のサポーターが興味をもってくれることを期待しています。

Q: “We Recommend” のページは、あなたのウェブサイトで最も面白い特徴の1つですよね。あれは一体何なのですか?出版社のウェブサイトとしては普通のことではないですよね。:)

政治的、文化的な活動家としての、私たちの長年の経験からきたものなのです。そして、本や、しばしば主流から排斥されがちな考えをプロモートする方法でもあるのです。ささやかな方法ですが、私たちなりに、多少のサポートが必要ではないかと思われる問題や人々に、注意を向けようとしてるのです。私たちは、現状の世論の強い動向の中で、しばしば無力さを感じます。だから、“We Recommend” で、“賛成か、反対か、どちらかに決めなさい” という思考傾向に、押し流されないよう努めているのです。私たちはまた、“普通の” ということに限定、制限しないでいたいのです。何事も可能なのです...

Q: ええと、来年の2人の予定を聞かずには、インタビューを終わりには出来ませんよね。ヴィゴは異常なほど忙しい一年でしたが、私たちはおかげでとても楽しかったです。来年も同じことを期待して良いですか?

同じように、睡眠時間は少しってことですね。この旅がどこに行き着くのか見てみましょう。

インタビューの時間を取ってくれたピラーに感謝したいと思います。(なぜあなたがデイヴ・エガーズを好きなのか、よく分かりますよ!) 私たち Perceval Press サポーターに任せてください。そして、これからも驚かされるのを楽しみにしています、とヴィゴに伝えてください。

[参考]
*1: パーシヴァルについて (Parzival または Perceval)
http://www.ne.jp/asahi/celtic/quilt/cdictionary/dic_ha_perce.html

*2: デイヴ・エガーズ、McSweeney's について
http://subaru.shueisha.co.jp/html/kaigai/kai_txt_ag.html#E

*3: ウォルト・ホイットマン (Walt Whitman) 1819-1892
ニューヨーク州ロングアイランドに生まれる。アメリカが生んだ最初の民衆詩人。自由詩、民主主義文学の先駆者。代表作は詩集『Leaves of Grass(草の葉)』。

*4: トマス・ペイン (Thomas Paine) 1737-1809
『コモン・センス』の著者。

*5: メアリー・スチュアート (Mary Stewart)
現代アーサリアン作家

translated by yoyo